「いまの漫画は下手」 『DRAGON BALL』元編集者が語る漫画の描き方とビジネス #昭和98年
成長する漫画ビジネス 大事なのはいつの時代も「読者と漫画家」
公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所によると、2022年のコミック市場は過去最大の6770億円を記録(66%が電子コミック)。一般社団法人日本動画協会によると、2021年の日本のアニメ産業市場(国内と海外の合計)は2兆7422億円とこちらも過去最大を記録。漫画やアニメは数少ない日本の成長産業であり続けている。鳥嶋さんは、著書において、損益分岐点などを含むビジネス実態についても丁寧に解説している。
──ジャンプでのライツビジネスも『DRAGON BALL』あたりから本格化しました。 「『Dr.スランプ』のときに嫌な思いをしたんです。テレビアニメの最後の頃、スーパーの店頭でアラレちゃんの商品が店ざらしになって埃をかぶっていた。あれを見て、自分が関わったキャラクターをこういう目に遭わせないようにしようと思って、『DRAGON BALL』で一気に整理した。商品化は自由にさせず、こちらの意思に反するものは出さないようにすると」 ──漫画起点のキャラクタービジネスはゲームや映画などにも広がり、大きくなっています。 「漫画は読者に近い若い才能がつねにモノをつくっている。ゲームやアニメは作るのにお金も人も必要です。でも、漫画は安くてリーズナブルで手軽に作れる。しかも、すでに雑誌連載や単行本で競争にさらされている。そこで勝ち残ったものだから、アニメやゲームを形にした時に結果が出やすい。そこから海外にも発展しやすくなっている。もう生態系ができているんです」 ──それは出版事業の強みですが、いまは個人でやる人も増えています。 「そんなに多くない人に読んでもらうなら、それでいいんです。でも、より多くの人に伝えたいと思ったら、ジャンプで描くのが一番いい。単に漫画が好きという人では続けられない。漫画家としてお金をもらい、それで生活していくということは、読者の要望に応え続けるという覚悟が必要です。だから、僕は著書で漫画家志望の人に問いかけている部分があります。君はその覚悟があるのかと」