「いまの漫画は下手」 『DRAGON BALL』元編集者が語る漫画の描き方とビジネス #昭和98年
──その後、冷酷な敵、フリーザが登場します。 「あれは当時、次の敵は誰にしようかというときに(バブル経済で地価が高騰するなか)地上げ屋って一番悪いよねという話になったんです。ある土地に住んでいる人を殺したり燃やしたりして、きれいにして土地を売る。そういうキャラにしようとなったのがフリーザでした」 ──地上げ屋からの発想だったんですね。 「そう。でも、そういう大きな設定を決めるくらいで、細かい作り込みはしない。決めすぎると予定調和になって、ストーリーを描いていて面白くならないんですよ」 ──ストーリーの流れで、終わりになるかと思われたのに、続くという展開が『DRAGON BALL』でも数回ありました。これには物語の完成度として賛否があります。 「漫画家が終わりたかったのに、編集部がもうちょっと続けてくれとなったら、漫画家はつらいでしょう。だから、漫画家が描いて楽しいかどうかは第一にある。一方で、プロの漫画家はファンからの要望、反響もちゃんと聞く。ファンの要望のあるうちは(終わりかけても)続けて描きたいという人もいるし、やはり苦しいとやめる人もいる」 ──『DRAGON BALL』では人造人間・セル編や魔人ブウ編はどうでしたか。 「僕はもうそのとき、ジャンプ編集部にいなかった。セル編の途中くらいで別の雑誌(Vジャンプの編集長)に異動していたんです。僕がいたら、セル編で終えてます。終えられなくて、かわいそうにと思っていましたね。でも、担当が変わったら基本的に口を出しちゃいけないんです」
──玩具会社とかビジネスに関わる人からの「やめないでほしい」という声もありましたか。 「そこは関係ないです。読者の反響と原作者の意思がすべてです。何が大事なのかという優先順位はシンプルに大事で、そこを間違えてはいけない」 ──編集長になると、その優先順位は重要です。鳥嶋さんの優先順位は何でしたか。 「編集長が見るのは、会社、作家、スタッフ、読者とありますが、私にとっての一番は読者です。次に作家。会社のほうは利益を上げればいいんで、あまり考えないです。そもそも出版社の人間は金勘定なんかできない。目の前の数字しか分からないですよ」