「やっぱり幸せのために生きてるんだ、人間は」――どん底も闘病も乗り越えた加山雄三86歳、波瀾万丈の人生 #昭和98年
2022年末、コンサート活動に終止符を打った加山雄三(86)。活動は60年以上にわたり、「永遠の若大将」として愛されてきた。今、地元・茅ヶ崎では銅像が立とうとしている。1960年代に一世を風靡してから、時には莫大な借金を背負い、事故で再起不能の危機に陥り、近年では脳梗塞、小脳出血でリハビリ生活も送った。「一生懸命生きていると、いいほうに向かうんだ」。人生の荒波をどう越えてきたのか、大らかに語った。(撮影:倭田宏樹/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
ラストステージの後も「まだ先がある」
2022年の大晦日、加山雄三はNHK紅白歌合戦に出演し、「海 その愛」(1976)を歌った。85歳、番組史上最高齢の歌唱。自身のラストステージだった。 「始まりがあれば終わりがある。やっぱり自分の限界みたいなのがあるんだろうね。下手な歌を聴いてもらうより、きちっと歌えるうちにやめたほうがいいやって。でも最後なんていってもね、自分で最後だとは思わないから。必ずまだ先があるんだ。音楽を愛するということは永遠に変わらない」 近年は病と闘った。2019年に脳梗塞を起こして療養し、翌年は小脳出血を発症。後遺症が残ったものの、言語などのリハビリに励み、2021年の冬にステージ復帰を果たす。 「脳梗塞も小脳出血も、いち早くカミさんが病院に連れていってくれた。脳梗塞の時、俺は異変を感じていたけど、病院は明日でいいかなってくらいに思ってたんだ。でも、次男の車ですぐに病院に向かって。それがよかったらしいんだよ。翌日だったら、よいよいになっていたと。今こうしてしゃべっているのはカミさんのおかげ。小脳出血の後、言語のリハビリは2年近く継続したかな。ちゃんと声が出て、歌えるよと思った時は、言葉に表せないくらいうれしかったね」 故郷の茅ヶ崎には、まもなく加山の銅像が立つ。 「銅像って、死んだ人間がなるものだと思ってたんだよ。西郷隆盛とかさ。でも、そうじゃないんだと。何色がいいか聞かれたから、金色って言っちゃった。加山雄三じゃない、加山金像だよ(笑)。次から次へといろんな苦労があったけど、銅像ができるなんて言われたらもう死ねないな」