「フェミニズムと映像表現」展が東京国立近代美術館で開催中。作品を通して考える、ジェンダー格差のある社会構造の問題点とは
現代日本の作家が表現する、対話としてのフェミニズム
本展では現代の映像作品が2点展示されています。次に紹介するのはそのうちのひとつで、現代の女性の視点でこそ語ることができるテーマを扱っています。 ■遠藤麻衣×百瀬文《Love Condition》2020年 身体やジェンダーの観点から作品制作をしていることで知られている遠藤麻衣さんと百瀬文さんによる作品です。遠藤麻衣さんはメディアや方法論を横断しながら、クィア/フェミニスト的な美術表現を追求しています。近年では批評家・キュレーターの丸山美佳さんとともに日本発のクィア系アートzine『Multiple Spirits(マルスピ)』を発行したことでも知られています。百瀬文さんはコミュニケーション中で生まれる不均衡をテーマに身体、ジェンダー、セクシュアリティに深く切り込む作品を制作し、国内外で活動しています。 本作では、二人が「理想の性器」をテーマに粘土を捏ねながら語り合います。性器を通じた他者との親密なコミュニケーションのあり方は、時代によって変化し得るものですが、この作品では、現代の私たちのコミュニケーションツールとしての性器のあり方を改めて追求します。 いざ理想の形はと問われるとなかなか答えるのが難しく、作品を見ながら考えてみてもなかなか思い浮かびません。ですが、二人の対話を通して、自分の持つ固定観念に強く影響されていたことに気づかされました。時代に合わせて性器の形も役割もアップデートできたらいいのにと、ポジティブに語り合いたくなる作品です。 遠藤さんと百瀬さんも、自由に発想しているつもりでも既存の形状に引っ張られてしまっていることに気が付きながら、何とかそこから離れようとします。そんな二人から生まれてくる対話では、これまで考えたこともなかった新たな視点がたくさん登場しました。「自分の体に必要なときだけジョイントする」「形を変えてシェアをすることができる」「性器が器なら中にはボールがあるはず」。 子どもを望まない人も多い現代に、自分にとって必要な性器はこれまでの既存の形とは違っているかもしれないし、いつか人類の進化の過程で性器を取りはずすことができるようになる可能性もあるかもしれません。そして、性差も暴力性もない性交とは何か、その先に生まれるコミュニケーションはどんなものなのでしょうか。