日本で印象派が人気な理由とは? 西洋のサロンを震撼させた「浮世絵の構図法」
ヨーロッパに衝撃を与えた「日本の浮世絵」
―印象派が、まさか"アバンギャルドな画家たち"だったとは知りませんでした。 アカデミーの画家は絵画世界の中を現実世界に見えるように描いていました。ですから、じっくり下地をつくって、筆跡が残らないように滑らかな画面にするのが大切な約束事だったのです。しかし、印象派は、筆跡を残すことも厭わず素早く描いているので、サロンにもなかなか入選できませんでした。筆跡を残し、物質感をあらわにすることは「これは絵である」と表明しているのと同じで、アカデミーの思想に反するからです。 また、印象派の誕生には「日本の浮世絵」が大きな影響を与えています。松の木が画面からはみ出すような浮世絵の構図は、私たちの土着的美意識にあるものなので日本人なら変に思いませんが、当時の西洋人にとっては大きな衝撃だったようです。 それまでの西洋の絵画とは全く違う、風景を四角いフレームで切り取ったような浮世絵の構図法を印象派は取り入れました。このことからも、印象派が「モダニズムの革命児」だったことがうかがえます。 ――浮世絵が大きな影響をもたらしていたので日本人に馴染みやすいのですね。日本で印象派の企画展に大行列ができる理由がひとつわかりました。
美術館での鑑賞の仕方
――混雑していることの多い美術館ですが、お勧めの鑑賞の仕方はありますか? 美術館はテーマごとに順番が組まれていますが、きちんと列に並んで観ていると疲れてしまいます。最初に会場全体をざっと見て、展示全体の作品量を把握しておくのが良いでしょう。例えば「5つの部屋があって、あそこで展示が終わる」という風にまず展示構成を確認して、空いていて見られるとこだけ最初に回ってしまうのです。 その後もう一度、最初に見られなかったものや自分が気になるものをじっくりと鑑賞します。好きなものは2回でも3回でも戻って見て良いのです。最初から行儀よく列に並んでいると集中力も切れてしまうので、列から外れてみるのがおすすめです。美術館によっては再入場できる場合もあるので、一度出てコーヒー休憩を挟んでも良いかもしれませんね。 (取材・文/小林実央[PHPオンライン編集部])
佐藤直樹(東京藝術大学美術学部教授)