日本で印象派が人気な理由とは? 西洋のサロンを震撼させた「浮世絵の構図法」
2つめは、第1回印象派展が開催された年【1874年】です。この年号を覚えておけば、自分が見ている絵画が印象派以前のものか、以降のものかがわかるわけです。もちろん1874年よりも前に印象派の作品は描かれていますが、展覧会は1874年が最初なので、この時に印象派の宣言がなされたと言っていいでしょう。 印象派はアバンギャルドな画家たちで、サロンにとっては反抗者でした。ただ、印象派が出てきたからといって、普通の絵がなくなるわけではありません。同時期にフランスの美術学校やフランスアカデミーのサロンでは、印象派とは対極のオーセンティックな作品も大量に作られていました。「同じ年なのに、こんな絵も描かれていたのか」という多様性も見えて美術を見るのが面白くなるはずです。 以上の2つが年号としては大事です。 3つめは【ベルヴェデーレのアポロ】です。 西洋美術において、人間の姿を描くことは非常に重要なことでした。ヨーロッパでは古代から美しい人間の姿が追求されてきました。オリンピックも古代ギリシャが発祥ですが、スポーツによって理想的な美しい体になることを追求し、その価値観がローマにも受け継がれたのです。 バチカンにある「ベルヴェデーレのアポロ」という彫刻は、そんな美しい身体像の代表的な作品として、16世紀から18世紀の間、美術家の手本にされてきました。「ベルヴェデーレのアポロ」の姿を覚えておけば、西洋の美術作品で表現された人間像を見るときの判断基準にできるのです。 古典という言葉はすごく便利なもので、しばしば「古典的作風」や「古典に回帰した」などと使われていますが、どの時代や作家の作品を指すのかはすごく曖昧に使われてしまっています。 例えば、印象派の画家が古典回帰したと言われた場合、ルネサンス期の画家の作品を参考にしていたり、あるいはバロック時代のレンブラントなどを指すことがあるでしょう。 しかし、本来の「古典古代」は何かというと「ベルヴェデーレのアポロ」なのです。古典的な人間像の表現として「ベルヴェデーレのアポロ」を思い浮かべることが出来れば、西洋美術における理想的身体美が理解しやすくなるはずです。