「点滴怖いけど頑張れる」闘病の子に寄り添うファシリティドッグ 小児病棟に広がる笑顔 #病とともに
小児がんを乗り越えた子からの感謝
2022年2月から約半年間、同センターに入院していた宇田華都さん(14歳)もその一人だ。 ちょうど小学校の卒業式の準備が始まった頃に小児がんが発覚。生活が一変した。頭では状況が理解できても、気持ちが追いつかずに過剰なストレスを感じる場面もあったという。 華都さんはもともと動物が苦手だったが、犬好きであるお母さんから「プロのワンちゃんだから大丈夫だよ」と言われてマサに来てもらうようになった。 「最初に挨拶に来てくれたときは恐る恐る撫でるくらいでした。そこからだんだんと慣れていきました。マサは動じないので、こっちが萎縮しないでも大丈夫だとわかりました」
マサに会えるのは週に1、2回程度。それでも、つらい病院生活においてマサの存在はどんどん大きくなっていった。 「最初は治療に前向きではなかったですが、マサと出会ってからは体調が悪くてもマサと一緒なら頑張れた。マサはつらいときでもただ寄り添って、自分の話を聞いてくれるという感じがしました。それに、マサはモフモフしていて柔らかく、癒やされました」 想定された多くの副作用が出て、精神的に不安定になる日もあった。ある日、面会に来たお母さんが帰らないようしがみついて大声で泣き叫んだことがある。そんなときに現れたのがマサだった。 華都さんのお母さんはこう振り返る。 「もう手に負えなくてどうしたらいいのかわからないときに、マサくんが来てくれたんです。そして一緒に散歩したら、娘の心がどんどん落ち着いてきた。それで私も帰ることができました」
退院してから1年以上経った今でも、マサのことは毎日気にかけている。インスタグラムをチェックしたり、マサと撮った大量の写真を見返したり。「マサに助けてもらった分、自分も恩返しがしたい」。病院に行った際はマサの活動のための募金箱に小銭を入れているという。
病院で「日常」とつながれるという効果
国立成育医療研究センターで総合診療部長を務める余谷暢之さんは、ファシリティドッグの効果は「日常」から隔絶されている子どもの患者ほど効果が大きいと語る。