「金融政策の効果は十分あった」日銀・黒田総裁会見1月18日(全文2)
経済と物価のリスクの関係性をどう見ているのか
記者:ロイター通信の木原です。2点お願いします。まず1点目は、経済・物価についてなんですけれども、新しい見通しを見ると、経済の、特に2024年度の成長率の見通しの下方修正が比較的大きいように思います。また物価についても、より基調に近いと思われるコアコアについて、2024年度それほど伸びないというか、ほぼ10月に見通していたとおりということだと思うんですけれども、海外経済、今後、減速していく中、成長率の見通しについて下方修正しているということは、やはり日本経済の成長について、ある意味、それほどまだ力強いものにならないんだとすれば、賃金の上昇にどういう影響を及ぼすのか、また、そういった賃金の上昇についてのまだ確信が持てないというところが多少、物価の見通しに反映されているのか、経済と物価のリスクの関係性についてお願いしますっていうのが1点目です。 2点目は、共通担保オペの拡充の趣旨についてはご説明でだいぶ理解できたんですけれども、そうなると、これがやはりYCCの新しいツールとして組み込まれていくということなんでしょうか。もともとYCCの本筋っていうのは、国債買い入れオペによって金利の、イールドカーブの形成を促すことだったと思うんですけれども、そこに新しいものを加えるということは、やはりそれだけYCCの運営が難しくなっているということとも言えると思うんですけれども、その辺り、このYCCにおける共通担保オペの位置付けについてお願いします。
賃金の上昇が加速すると考えている
黒田:まず第1点目につきましては、海外経済が減速しているっていうことは展望レポートでも申し上げているとおりでありますし、IMF等の見通しでもそういうふうになっているわけですが、その下で従来の見通しよりも成長率、若干下振れしているっていうことはそのとおりでありますけれども、その下でも日本経済としては潜在成長率を上回る成長が2022年、2023年、2024年度と続くという見通しでありまして、これはおそらくG7の中でも成長率が高いほうだと思います。その理由、原因としてはいろんなことがあると思いますけれども、コロナ禍からの回復のテンポが少し遅かったっていうこともあるとは思うんですけども、他方で、やはり緩和的な金融環境が続いているということと、政府の経済政策による支援というものもあるということもあって、こういうことになっているんだと思います。 その下で、賃金の上昇率についても、これまでとやや異なり、かなり上昇のテンポが強まっていくとは思っているわけです。それは、現に経済界、あるいは労働界からの春闘に向けた意見もありますし、昨年の夏・冬のボーナスは極めて好調だったわけですし、また、企業の収益レベルも史上空前のレベルにあるということもあります。そして潜在成長率を上回る成長が続く下でGDPギャップがどんどん改善していく、人手不足がさらに顕在化するということもありますので、私どもとしては、賃金の上昇が加速していくという考えには立っておりますけども、それがどのくらいかっていうのはまだ、ある意味で言うと新しい現象ですので、つまり物価がこれだけ上がるというのも数十年ぶりの現象ですし、それから企業収益が史上空前のレベルっていうのもまさに史上空前のことですし、いろんなことがありますので、完全に、なんて言うんですか、絶対これだけ上がるとか今の段階で言えるものではないと思いますけども、私どもも賃金の上昇率は加速していくというふうに考えております。 共通担保オペにつきましては、従来からこれは活用しておりましたし、特にマイナス金利導入時に広げましたし、今回さらに拡充したっていうことで、金融政策のツールとしてもともとあるものでありますし、先ほど申し上げたような意味で効果的だと思いますので、ツールを拡充したっていうことはそのとおりなんですけども、これが何かYCCの限界を示しているというようなことではないと。むしろYCCをより有効にというか、イールドカーブを適正にするための1つのツールとして使えるということであります。