考察『光る君へ』48話「つづきは、またあした」まひろ(吉高由里子)の新しい物語へと三郎(柄本佑)は旅立つ「…嵐がくるわ」最終回、その強いまなざしの先に乱世が来ている
賢子は光る女君に
先述のとおり、親仁親王はのちに後冷泉帝として即位する。賢子はその御乳母として三位の位を受け、大弐三位と呼ばれる。 頼宗と御簾の内で昼下がりの情事を楽しむ賢子。 頼宗「お前、定頼とも朝任とも歌を交わしているそうではないか」 賢子「私は光る女君ですもの」 定頼とは公任(町田啓太)の嫡男。小倉百人一首に権中納言定頼として歌が採られている。 権中納言定頼 朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれ渡る瀬々の網代木 (夜明けに宇治の川霧が漂っている。その霧が薄くなってきたところに見えてきたのが、川の浅瀬で氷魚をとる網代木だよ) 賢子も大弐三位として小倉百人一首に歌を残す歌人であることは45回のレビューで述べた。有名歌人同士が交わした恋の歌は、 定頼 見ぬ人によそひて見つる梅の花散りなむ後のなぐさめぞなき (梅の花をあなただと思って眺めています。でも散ってしまった後は私を慰めてくれるものはありません。※あなたに逢いたいのです ) 賢子 春ことに心をしむる花の枝に誰かなほさりの袖か触れつる (春が来るたびに梅の枝に私の心を沁み込ませているのです。その枝に、誰が気まぐれに袖を触れるのでしょう ※そんなことを仰るけれど、私とは遊びなんでしょう? ) 「ちちうえー」と宣孝(佐々木蔵之介)の膝の上で月を眺めていた賢子ちゃんが、こんなに見事に貴公子たちと渡り合うようになって…と、親戚のおばちゃんの気持ちで観た。 実の父である道長と母・まひろができなかったことを、なんでもしてほしい。 光る女君として「(俺と関係をもてて)ありがたく思え」なんてぬかす上流の男たちを薙ぎ倒して進め。 しかし、まひろは、賢子には実の父は道長だよと教えておいたほうがよかったんじゃないかしら。この作品内では、道長の息子である頼宗とは異母兄妹にあたる……。頼宗と交際していたことは残された歌により史実としてわかっているが、賢子が道長の娘というのはドラマ上の設定、フィクションであることは野暮を承知で念押ししておきたい。
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