ハリルホジッチ監督がポリシーを覆した理由
一方で直近のリーグ戦で2試合連続ゴールをマークし、昨年6月以来の代表復帰が期待されたFW大迫勇也(ケルン)は選外。8月以降の7試合で6ゴールを量産し、28歳にして才能を開花させた192センチの大型FW長沢駿(ガンバ大阪)の名前も、リストには見当たらなかった。 国外でプレーする選手を代表チームに招集する場合、各国協会はレターを試合の15日前までに所属クラブへ送付する必要がある。ハリルホジッチ監督はレターの提出期限後に大迫が点を取り始めたと説明したうえで、こう続けた。 「1点、2点を取ったからといって、すぐにA代表に呼べるわけではない」 要は岡崎、浅野拓磨(シュツットガルト)、武藤嘉紀(マインツ)からなるワントップの序列に割って入るのは時期尚早と強調したことになる。しかし、例えば原口はヘルタ・ベルリンで開幕からレギュラーとして活躍したことが、先発に抜擢されたタイ戦での先制ゴールを含めた大活躍につながっている。 いまが旬の選手は、代表に招集されたことでさらにモチベーションが高まる相乗効果も望める。その意味では大迫や長沢、J1で最も切れ味鋭いドリブルを披露しているFW齋藤学(横浜F・マリノス)らも旬の真っただ中にいるが、指揮官はこう語っている。 「15人の海外組の中で、先発で出ていない選手もいる。普通の基準ならば呼べないわけだが、彼らを外してしまえば他に誰が代わりにいるのか? かなり難しい。残念ながら海外と日本で行われているフットボールとでは、まだ歴然とした差がある。特にフィジカルの面においてだ。Jリーグのことを世界一素晴らしいリーグだと言えば、私は『お前はフットボールを知らないのか』と言われるだろう」 決してJリーグ批判ではなく、日本サッカー界の未来を憂慮するがゆえの提言だと指揮官は語気を強める。長沢や齋藤らも注目しているといいながら、それでもポリシーを覆してまで欧州組偏重を貫くのは、リスクを冒したくないからに他ならない。実際、長沢に関してはこうも言及している。 「いまのパフォーマンスを続ければ、運動量が多いので攻撃の組み立てに参加できるという感じもする。ただ、アジア最終予選で参加させるには少しリスクがある」 先のUAE戦で、A代表デビューのMF大島僚太(川崎フロンターレ)を先発に大抜擢した同じ指揮官の言葉とは思えない。そのUAE戦で大島が2失点に絡み、ホームでまさかの逆転負けを喫したショックがトラウマとして心の奥底に刻まれているのか。