「ノーベル賞科学者」が発見したヨーグルトと長寿の間にある秘密…「100年前の仮説」が「21世紀に証明」される驚きの展開
「お腹の調子が悪くて気分が落ち込む」という経験がある人は多いのではないだろうか。これは「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムによるものだ。腸と脳は情報のやりとりをしてお互いの機能を調整するしくみがあり、いま世界中の研究者が注目する研究対象となっている。 【画像】「日本人はアメリカ人より発症率が高い」…「大腸がん」の「驚くべき事実」 腸内環境が乱れると不眠、うつ、発達障害、認知症、糖尿病、肥満、高血圧、免疫疾患や感染症の重症化……と、全身のあらゆる不調に関わることがわかってきているという。いったいなぜか? 脳腸相関の最新研究を解説した『「腸と脳」の科学』から、その一部を紹介していこう。 *本記事は、『「腸と脳」の科学』(講談社ブルーバックス)を抜粋、編集したものです。
ヨーグルトが長寿の秘訣?
腸内マイクロバイオータは、どのようにして注目を集めるようになったのでしょうか。それは、ある科学者の先駆的な発想がきっかけでした。 1908年にノーベル生理学・医学賞を受賞したウクライナの微生物学者イリヤ・メチニコフは、免疫のしくみを解明した功績が知られていますが、晩年は、老化に関する研究に取り組んでいました。 大腸に便が滞留することで大腸内に棲んでいる腐敗菌が有害物質を産生し、それが細胞の老化を早め、短命の原因となっているのではないか、と考えるようになったのです。 また、古来ブルガリア地方に100歳以上の人々が多いことに注目し、この地方の食事を調べました。その結果、他の地方と比較してヨーグルトが愛飲されていることに気づき、ヨーグルトこそが長寿の要因ではないかと考えるに至ったのです。 そこで、ヨーグルトを飲むことで乳酸菌が腸内に棲みつき、有害物質を産生する腸内の腐敗菌を駆逐し、長寿を得ることができるのではないかという「メチニコフのヨーグルト不老長寿説」を唱えました。この説によって、ヨーグルトがヨーロッパで広く普及するようになりました(※参考文献2-4)。 メチニコフが所属していたパスツール研究所では、1899年に母乳を飲んでいる新生児の糞便からビフィズス菌が発見されており、腸内のビフィズス菌の生態に対する生理作用について研究が行われていました。 ちなみにパスツールは、「細菌の存在なくして生命は成り立たない(Life is not possible without bacteria.)」との名言を残したともいわれています。これらのことも、メチニコフがヨーグルト不老長寿説を唱えることにつながったのではないかと考えられています。