5月FOMCが「最後の利上げ」となるのか? 米国の経済指標を見てみると……
5月の米FOMC(連邦公開市場委員会)で見込まれる利上げが最後の利上げになるとの観測があります。「インフレ退治の代償」が目立つ中で、米FRB(連邦準備制度理事会)の今後の金融政策はどうなるのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【写真】急激に進む円安は止められない? 今さら聞けない為替のキホン【Q&A】
5月の利上げでFF金利は5.25%になる見込み
日本のゴールデンウイーク中の5月3日、米国では金融政策を決定するFOMCが開催されます。結論を先取りすると、5月FOMCでは0.25ポイントの利上げが実施され、政策金利であるFF金利(誘導目標レンジ上限値)は5.25%となる見込みです。3月の銀行破綻を受けて金融面の不安がくすぶる中ではありますが、高すぎるインフレ率を抑え込むため、FRBは金融引き締めを講じるとみられます。この間、景気については大きく見れば減速基調にあるものの、直近では一部の企業景況感指標が持ち直しており、見立ては強弱区々となっています。
3月CPIは+5% インフレ率は明確に減速
ここで現在の米国の経済指標を整理します。まずインフレ率に目を向けると、最新値である3月の消費者物価指数(以下、CPI)は前年比+5.0%と、2月から明確に減速しました(2月は前年比+6.0%)。食料品が前年比+8.3%と高止まりした一方、エネルギーがマイナス6.4%へと急低下し、2021年1月以来のマイナス圏に突入したことで総合インフレ率は大きく下押しされました。これらを除いたコアCPIは前年比+5.6%で2月と同程度の伸びでしたが、コアCPIから(価格変動が景気に対して遅行する)家賃を除くと前年比+3.7%まで減速しています。インフレ率はFRBが目標とする2%をなお大幅に上回っているとはいえ、望ましい方向に向かっているのは間違いありません。
「代償」が目立つ中で持ちこたえる米国経済
企業の景況感は改善 総合PMIは50を上回り1.1pt上昇 次に企業活動に目を向けると、企業景況感を示す指標である総合PMIは好不況の分かれ目とされる50.0を明確に上回る53.5となりました。製造業とサービス業が双方とも4カ月連続で改善したことで3月から1.1pt上昇しました。 製造業PMIは50.4へと1.2pt上昇し、2022年10月以来となる50台を回復しました。企業からの報告によると、生産や新規受注の量が回復するとともに、雇用も持ち直した模様です。このPMIの強さは、その他多くの製造業関連の指標が下向き基調になっていることと整合しないため、やや割り引く必要がありますが、それでも家計と企業が堅調な支出を維持する中で製造業の生産活動が底打ちした可能性を示唆します。同時にサービス業PMIは53.7と約1年ぶりの高水準へ回帰しています。 米国経済は金融引き締めによって住宅市場(住宅販売や着工件数)が著しい減少基調にあるほか、一部の銀行が経営難に直面するなど「インフレ退治の代償」が目立ってきましたが、総じてみればよく持ちこたえていると評価できます。