NYヤンキースの環境アドバイザーが語った、スポーツが持つ「巻き込み力」【Sport for Good】
スポーツが持つ「巻き込み力」
さらにハーシュコウィッツ氏が強調するのは、スポーツが持つ、多くの人々を巻き込む力だ。 「人々の行動を変革させるのに、スポーツは優れた効果を発揮します。実際に、アメリカでは、科学のニュースを日頃から見ている人は20%未満ですが、スポーツのニュースを見ている人は80%にも上ります。スポーツ団体は政治団体ではなくコミュニティ組織とみなされているため、(政治信条にかかわらず)多くのファンにアプローチできます。 さらにスポーツイベントには、エネルギー産業、食品産業、運輸産業などのさまざまな企業がスポンサーやサプライヤーとして関わっています。そのため、スポーツ団体が気候変動問題に取り組む意思を示せば、彼らも無関係ではいられません。私たちが率先して道筋を示すことで、環境的なアプローチを多くの人々に伝えることができるのです」 プロスポーツチーム団体がファンやスポンサーに対して環境的なアプローチをするように伝えているのと同時に、プロスポーツのスポンサーもチームに対して気候変動対策に取り組むように求めているという。8割のスポンサーは独自のサステナビリティレポートも作成、「気候変動対応をしていない組織と関わりたくない」という意思表示をしている実態もあるそうだ。 また、米国内のある世論調査によれば、「7割以上のスポーツファンが、スポーツチームに気候変動問題に取り組むことを期待」している、というデータもあり、ファンの期待に応えるためにも行動が必要な状況にあるという。 今年に入ってから Sport For Smile プラネットリーグが実施した、日本のプロスポーツ界の気候行動を推進するためのオンラインキャンペーンでは、ハーシュコウィッツ氏は、以下のような応援メッセージを送っている。 「米国プロスポーツの全コミッショナーが気候変動にコミットしています。今や『正しい行動』を越えた義務だと認識されているからです。ファンや協賛企業もスポーツ界に環境問題への行動を求めています」 気候変動は、はるか未来にまで多大な影響を与える。私たちの行いによって、地球の運命が決まる。だからこそ、ハーシュコウィッツ氏は社会的影響力のあるスポーツ団体に連帯を呼びかける。 「私たちは全員が同じ立場です。互いに連帯し、協力して気候変動対策に取り組まなければなりません」 いま、ヤンキースをはじめ、世界の著名スポーツ団体が連帯して気候変動に立ち向かっている。このムーブメントはさらに多くの人々を巻き込み、大きなうねりとなって広がっていくだろう。 特集「Sport for Good」では、今後も国内外のスポーツ界におけるサステナビリティを推進する取り組みを紹介していく。好きなスポーツチームが気候変動アクションを起こしていたら、あなたもそのアクションに参加してみてほしい。自分ひとりの力なんて些細なものだと思う方もいるかもしれない。そんな方にハーシュコウィッツ氏のこの言葉を送りたい。 「ほんのちょっとした行動でも構いません。小さな行いの積み重ねが大切なのです」