“接待疑惑”で注目「総務省」ってどんな組織?
総務省の誕生
会社でも役所でも「総務部」とか「総務課」がある。総務とは「全体の事務をしめくくる」というのが辞書の説明だが、役所的にいうと「他の部署に属さない仕事」とか「人事・組織・文書など組織に共通する業務」を担う部署を「総務」という。その点、日本の内閣制度、省庁体制の中で「総務省」はそれに当てはまるだろうか。むしろ「内閣府」がそれに当たるようにも見えるがどうか。 いまの総務省は2001年1月の省庁再編で(1)旧総務庁(2)旧自治省(3)旧郵政省――が統合して誕生した。20年が経ってもこの3省庁合体の仕組みは事実上温存されている。2021年3月現在の組織は以下の通りである。 【旧総務庁系】 (1)人事・恩給局(2)行政管理局(3)行政評価局(4)統計局 【旧自治省系】 (1)自治行政局(2)自治財政局(3)自治税務局 【旧郵政省系】 (1)情報通信国際戦略局(2)情報流通行政局(3)総合通信基盤局 総務庁は1984年に旧総理府と旧行政管理庁が合体して出来た「庁」(大臣庁と言われ主務大臣がいた)で省庁全体の要(内部管理)だった。自治省は戦前の内務省の伝統を引き継ぐ都道府県・市町村の行政、税財政の管理を行ってきた。そして、郵政省は戦前の逓信省の伝統を引き継ぎ、戦後は長らく「郵便」「貯金」「保険」の郵政3事業と「通信」「電気」「放送」の電波3事業を行ってきた省で事業官庁の性格が強かった。 2001年の省庁再編で郵政3事業はいったん郵政事業庁になるが、小泉純一郎政権のもと進められた「民営化」が2007年10月実現し、役所組織から消え去っている。いま残るのは電波3事業のみ。今回の接待問題をめぐり、国会で「記憶にありません」などと語る総務省幹部は、内閣広報官を辞職した山田真貴子氏、総務審議官を辞職した谷脇康彦氏を始め、郵政系の職員ばかりである。
「バラバラ合体」、人事交流にも厚い壁
旧総務庁、旧自治省、旧郵政省。よく見ると、この旧3省庁には何の共通点もない。バラバラ合体で誕生した「総務省」はもともと「他に属さない省庁」の寄せ集め。そこで生え抜き官僚がそれぞれ力を持っていった。 集中砲火を浴びて辞職した谷脇氏は「ミスター携帯」と呼ばれているそうだ。郵政民営化で抜け殻になった旧郵政省で残った電波行政の“クロート中のクロート”。この分野を分かる政治家は殆どいない。歴代総務大臣も、「地方のことを面倒みる」自治大臣が衣替えしたポストという程度の認識しかないのではないだろうか。 また、総務省では旧省庁の組織ごとに勤務するフロアも別々で物理的距離があるうえ、省内の人事交流も旧省庁内でしか行われていない。筆者の大学ゼミの教え子に総務省採用のキャリア官僚がいるが、彼は総務省採用といっても旧総務庁系の採用で、行政管理や政策評価の部署での異動に止まり、決して旧自治省系にも旧郵政省系に異動することはないのだという。それだけ旧省庁体制の壁は厚い。誰が大臣になっても、このバラバラ複合体の総務省でガバナンス(統治)を発揮するのは難しいだろう。 これは厚生省と労働省が合体した厚労省でもそうだし、運輸省と建設省が一緒になった国交省でも同じ。20年前の省庁合体は見せかけ上のもので内実は別々なもののようだ。省庁の数を減らす、大臣の数を減らす省庁再編に止まり、内側の官僚組織は旧体制が温存されたままだ。この一部が馬脚を現した。それが総務省の組織面からみた問題だ。