トランプ氏に身構える中銀、ショック警戒-25年の利下げは慎重な構え
(ブルームバーグ): 世界の主要中央銀行は、政策金利を今年さらに引き下げる構えだが、トランプ次期米政権の政策を注視しつつ、利下げを慎重に進めることになりそうだ。
今後1年は主要国・地域のほぼ全てで金融緩和が見込まれるが、ペースは落ちる可能性が高い。ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、先進国・地域の金利総合指標が2025年に72ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)しか低下しないと予測。これは24年のペースを下回る。
金利総合指標の変化は、既に進行する緩和サイクル、十分な解消がなお必要かもしれないインフレ圧力への根強い警戒、近く発足するトランプ政権2期目の未知数を反映する。
トランプ次期大統領は、世界各国・地域の中銀にとって頭の痛い存在だ。トランプ氏が脅しをちらつかせる貿易関税が実行に移されれば、経済成長を損ない、報復措置が取られる場合、消費者物価も押し上げかねない。
米連邦準備制度の注意はインフレ再燃の危険性に既にシフトし、大幅緩和の可能性は当面抑えられている。経済成長を支えるため、欧州中央銀行(ECB)からイングランド銀行(英中央銀行)に至るまで、他の主要国・地域中銀は借り入れコスト引き下げを継続する構えだが、急ぐ様子は見られない。
今回の四半期ガイドが注目する23中銀のうち、政策金利が年末時点でより高くなる可能性があるのは、日本銀行とブラジル中央銀行だけだ。日銀の利上げサイクルは続く公算が大きく、ブラジル中銀は財政支出が促すインフレの抑制に動く構えを崩していない。
BEのグローバルチーフエコノミスト、トム・オーリック氏は「政策正常化の途上にある中銀にとって、ラストマイルの歩みはスムーズではなかろう。平たんでない2%の物価目標に向けた進展とトランプ次期米政権からのショック、中立金利を巡る不確実性は全て、サプライズの可能性を増大させる方向に働く。先進国・地域中銀の政策金利の平均は24年末の3.6%から今年末に2.9%に向かうとBEはみている。短い距離でも移動が困難な場合がある」と指摘した。