自滅ではなく虎の策略だった?!…なぜ阪神は広島の九里から4本の適時打と6四球を奪い20勝一番乗りに成功したのか?
阪神が30日、無観客で行われた甲子園での広島戦に4-2で快勝、両リーグで20勝一番乗りを果たした。広島先発の九里亜蓮(29)は5回6四球と自滅し、阪神はそこにつけこみ4本のタイムリーを奪ったが、背景には阪神打線の「低めの変化球を捨てる」という徹底した戦略があった。対照的に秋山拓巳(30)は工夫した配球で7回3分の1を投げ6安打2失点の好投で3勝目をつかんだ。阪神の強さが勢いだけではなくなってきた。
目付けを変えて低めの変化球に手を出さない
「あれ?」 「おかしいな?」 九里はそんな態度や表情を何度もマウンド上で見せた。 ストライクが入らない。 一回一死から糸原を歩かせ二死になってから大山へも四球。“独り相撲“で二死一、二塁としてサンズにフォークをレフト前に引っ張られ先制点を失った。2回も歯止めがきかない。二死二塁から、前日は当たりのなかった近本に対して四球を与え、相性の悪い糸原と勝負せざるを得なくなった。その糸原に高めに浮いた甘いフォークをライト前に運ばれた。5回にも先頭の大山にセンター前ヒットを許してサンズにまた四球。これでこの試合5つ目の四球である。 自ら得点圏に走者を進めてしまい、怪物ルーキーの佐藤にもボールが先行。3-1から外のツーシームを捉えられて一、二塁間を破られた。これで3失点目。続く梅野にもタイムリーを許して計4点を献上して試合のペースを阪神に渡すことになった。 完全な自滅である。 だが、昨年まで阪神で7年間コーチとしてユニホームを着ていた評論家の高代延博氏は「九里の自滅のように見えるが実はそうではなく、阪神が九里攻略法を全員で徹底して、四球で崩れるように持っていったのだ」と分析した。 「阪神打線は徹底して低めの変化球に手を出さなかった。これはベンチの指示だったと思う。目付けを変えて、九里がストライクゾーンからボールゾーンに落としてくる得意の変化球を見送った。フォーク、ツーシームに誘われない。九里はマウンド上で“なんかおかしいな”という表情をしていたが、あれは、ストライクが入らないことに対しての“なんで?”ではなく、“なぜ阪神は振ってこないんだ”という表情だったと想像する。おそらく九里は球種の癖でも盗まれているのでは?と疑心暗鬼になったのだろう。当然、カウントが悪くなり、ひとつボールをストライクゾーンに上げてくるのを阪神は見逃さなかった。しかも、その変化球を狙っていたのでタイミングがすべて合った。4本のタイムリーすべてがそうだ」