自滅ではなく虎の策略だった?!…なぜ阪神は広島の九里から4本の適時打と6四球を奪い20勝一番乗りに成功したのか?
ここまでは5試合34イニングを投げて9個の四球しか与えていなかった九里は典型的なグラウンドボールピッチャーである。フォーク、ツーシーム、チェンジアップ、シュート、カット、スライダーの6種類の変化球を持ち、特にフォークとツーシームを低めに落として誘い、内野ゴロに仕留めるのが特長だが、そのウイニングショットをことごとく見送られてしまっていた。あのマウンドで浮かべた表情は、自らの制球難や審判のジャッジに対するものではなく、「なぜ阪神打線は振ってこないんだ?」という疑念だったのかもしれない。 「広島の永川投手コーチが“変化球が多すぎる”とコメントしていたが、阪神が戦略を徹底しているにもかかわらず変化球が多すぎた。本来なら打者が一巡した時点で、そこに気がつき、もっとストレートを多く使う配球の切り替えるべきだったが、いかんせんキャッチャーが坂倉では若すぎた。ストレートでストライクを取りにいっていれば、目付けを変えていた阪神打線は、それも見送っていただろう」 確かに1回は24球中ストレートは3球。2回は28球中4球と、元来ストレートが少ない変化球投手ではあるが、あまりに少なすぎた。阪神打線が手を出さないと決めている高さにストレートを使えば、カウントが逆転、変化球に手を出さざるをえない状況に反転した可能性もあったが、そこまで対応しきれなかった。 そして4回が終わった時点で83球と球数が多くなったため、握力が低下、フォークやツーシームといった“挟み球”の精度やキレも落ちていた。5回に佐藤がツーシームを右前タイムリーとしたのも戦略の成果だろう。 試合後、矢野監督は、「打線は1人で決めるというよりはみんなでつないでいい攻撃ができたと思う。秋山も前回は早い回で降板することになったが、責任を果たすようなしっかりとした投球をしてくれた」と、全員で九里を攻略した打線を評価すると同時に7回までカープ打線を無得点に抑え込んだ秋山を称えた。