10年間以上レス夫婦「心も体も満たされない妻」なんで「夫」としかできないんだろう?「離婚」に踏み切れないもやもやの終着点は!?【作者に聞く】
ここ数年ずっと心も体も満たされない。10年以上セックスレスが続き、夫の顔を見るのが嫌な日もある。「2人目は?」とせっついてくる義母。大事なことを話そうとすると、のらりくらりと話を逸らす夫。ぽっかりと心に空いた穴は、いつまでたってもふさがらない、おぐらなおみ(@ogura_naomi)さんの「私の穴がうまらない」を紹介するとともに制作の裏側について話を聞いた。 【漫画】セックスレスの夫婦が離婚しない理由は何? ■10年以上もセックスレス!なのに「手持ちの駒=夫」としかできないんだろう 娘のアラタが小学2年生のときに引っ越してきたマンション。引っ越してからは一度もしていないため、ハルヒは「清らかなマンション」と呼ぶ。スーパーの帰り道、昔は手を出せば夫は手をつないだ。しかし、今は手を出すと「違うよ、焼き豚持ってやるって!」と笑われる。そんな小さなズレで、いつもハルヒは少し傷ついている。 「求められないなら、別れるしかない」と思いつつ、離婚に踏み切れないハルヒ。そんなハルヒを見て、「心だけじゃなく体も満たされたい」と、恋愛至上主義のヒカリは思う。しかし、40歳を過ぎて体に変化が…。同じ職場のミヤコは、結婚してすぐに夫が不倫。以降、夫との関係を拒み続けている。3人がそれぞれ「セックスレス」とともに悩み続ける夫や恋人との関係。いったい、「幸せ」とは何なのか。セックスレスから始まる夫婦の溝を描く。 ■一人で生きているだけでは「うまらない穴がある」。誰しも、根底には「愛がほしい」 ――まずは、本作を制作した経緯を教えてください。 同世代の女性と赤裸々な話をした際に、「パートナーとのセックスレス率がとても高いぞ」と思ったことがきっかけです。本当にみんなびっくりするほど「してない」な、と思いました。いわゆる人間の三大欲求といわれる「食欲・睡眠欲・性欲」のうち、「性欲だけはちょっとないがしろにされてない?」と感じたこともこの漫画を制作した経緯でもあります。 ――本作の見どころをお願いします。 「主人公のハルヒがグズグズ悩むところが見どころかなー」と。夫婦以外の誰に相談しても解決しない、結局自分とパートナーの問題でしかないのに、パートナーである夫はのらりくらりと対話を避ける。夫婦にありがちなことではあると思うんですが、「話し合い」ってちょっと敷居が高い感がありますよね。そのあたり、自分以外の夫婦はどうしてるのか、読者側はちょっとのぞき見の雰囲気が感じられていいかな、と思っています。 ――主人公はレスに悩んでいますが、それはきっかけであって「夫婦でお互い伝えられないことが溜まっていく」のが問題だということに気づかされます。おぐらさんがこの夫婦を描く際にこだわったところがあれば教えてください。 この漫画を描いている最中、担当編集者に「なんでこの二人は別れないの?」と何度も聞かれました。「別れてしまえば楽なんじゃない?」って。でも、ハルヒはそれをしなかった。その意味を探りたいなとは考えていました。子どももいるし、離婚ってそんなに簡単なことじゃないし、夫のことは嫌いじゃない。でも「この満たされない気持ちをどうしたら…?」という悶々として気持ちをどう解決したらいいんだろう、そんな雰囲気を出したい、そこはこだわりたいなと思ってました。 ――「旦那の思考がすごくリアル」という声もありました。どのような旦那さん像をイメージしましたか? 夫婦の物語を描くときにはどうしても自分の夫を思い浮かべてしまうんですが、うちの夫を想像してもこんなストーリー展開にはならないかも…(うちの夫はもうちょっと性善説というか、わりとのんきですね。妻の悩みもそれほど重要視しないタイプ)。私が考える男性って「いつも一人」というイメージなんですね。誰にも相談できない、悩みは自分でなんとか解決するしかない、という。一人で悩むあまり、夫婦間でも悩みの共有が難しくなっていく、そんな男性像をイメージしました。 ――独身、レスの既婚者、浮気からの離婚、それぞれ3人の女性の生き方があり、共通して「2人でいる方が寂しい」という過程を経て、選び取るゴールが深かったです。物語を通して伝えたいこと、込めた想いなどがあればお願いいたします。 自立して希望の職業も得て、一人で生きていくことに何の不満もない女性でも、根底には「愛がほしい」ということは、漫画を描いていて新たな気づきではありました。一人で生きているだけはうまらない穴がある、ということをタイトルにも込めています。いいタイトルだなあとしみじみ自画自賛しております。 ――そのほかにどのような漫画を描いていますか? コミックエッセイ的な自分の生活に近い漫画を描くことが多いです。現在は美大生として大学に通いながらの漫画制作なので、なかなか時間が取れないことが悩みです。大学の講義でジェンダー論などを学んで新たな知見を得たりしているので、そんな内容のストーリー制作にも興味があります。 取材協力:おぐらなおみ(@ogura_naomi)