井上尚弥の米ラスベガス上陸は異例尽くし…1億ファイトマネー、「完璧調整」、4団体統一戦構想
また現地での最終調整プランも万全に練られた。18日に渡米、会場のラスベガスMGMグランドには、試合4日前に移動する予定で、拓真が、現地での最終調整のスパー相手として同行、また「日常にストレスがないように」と、気心が知れ性格がとびきり明るい従兄弟のWBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者、前日本同級王者の井上浩樹も遠征に加わる。WBSSの準決勝が行われた英国・グラスゴーへの遠征の際にも、このメンバーで現地に入り、2人が井上尚弥の“パシリ役“を買って出て、安定したメンタルで試合に臨むことに成功した。浩樹は7月に日本王座から転落して引退を表明しているが、井上尚弥の戦いに同行することで気持ちに変化が現れるかもしれない。井上尚弥に唯一の不安があるとすれば、自粛期間中にパワーアップした肉体をそぎ落としていく減量だけだろう。 「体が変わり減量がきつくなるのではという心配の声もあるが、普段の体重は変わっていない。マロニー戦に、すぐ勝つにこしたことはないが、もうちょっとテクニックを見せられたらいい展開だと思う。パンチ力、攻撃力が先行しているが、尚弥の一番の武器はテクニックとスピード。そこを存分に発揮してもらいたい」 大橋会長もマロニー撃破に太鼓判を押した。 おそらく年内の試合は、この1試合だけになりそうだが、その先には、さらなる戦いの舞台が広がる。大橋会長は、次戦構想についても明らかにした。 「カシメロ戦はビジネス上の問題で流れたが中止になったわけではない。あくまでも延期。次戦で狙う? 一応、そのつもり。ただIBFから指名試合の話がきている。ドネアとウーバーリの勝者との話も出てくる。今回の試合が終わらないと、どうなるかわからない状況ではあるが、来年には4団体を統一するつもりでいる」 当初、戦う予定だったWBO王者のカシメロは、9月26日に同級11位のデューク・マイカー(ガーナ)を3回TKOで破り防衛に成功している。試合後、「次は井上だ」と吠えた。トップランク社のライバル興行に参加したことで、カシメロ戦の実現は簡単ではないが、さらにIBFからは1位のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)との指名試合を指令されている。またWBC世界同級王者、ノルディ・ウーバーリ(フランス)は、井上尚弥と激戦を演じたノニト・ドネア(フィリピン)と12月に防衛戦を行うことが決まっており、この勝者と、井上尚弥が統一戦を戦うビッグマッチ構想もある。ウーバーリが勝てば、統一戦で敗れた拓真の敵討ちの試合となりドネアが勝っても注目の再戦となる。 いずれにしろ、2021年にWBO、WBCの2つのベルトをまとめて腰に巻くのが、陣営の構想。そうなればファイトマネーは100万ドル(約1億500万円)から倍々ゲームで増えていくことになるだろう。アジアから、6階級制覇王者、マニー・パッキャオに続く、世界的なビッグスターが誕生するのだ。 「ここが夢のはじまり」 大橋会長が描く井上尚弥の未来が、日本のプロボクシング界に革命を起こすことになる。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)