アフマダリエフの挑発にも不動の姿勢 井上尚弥の“価値観”を元世界2階級制覇王者が絶賛「イノウエは最高の試合を追求する」
元世界王者の挑発的な言動が物議を醸した。WBAスーパーバンタム級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)のそれである。 【画像】米記者が愕然とした井上尚弥とブルース・リーの比較画像をチェック 30歳のウズベキスタン人が“標的”にするのは、世界同級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)だ。3回TKOで快勝を収めた今月14日の暫定王座決定戦後にはリング上で「なぜ俺を避けるんだ? 最強の選手は最強の選手と戦うべきだ。俺が義務だ。俺のベルトはどこだ?」とアピール。再三にわたって挑発を繰り返した。 SNSでも執拗な振る舞いをアフマダリエフは見せる。井上が「なんでタパレスに負けたやつから逃げなきゃいけないんだ。必要性がゼロだろ…」「戦いたいなら『価値』キープして待っとけ!!」と反論。すると、これに「君は2度とも避けた。武士道を尊重し、サムライとして行動するなら、いまや切腹が唯一の道だ」と辛辣なメッセージで切り返したのだ。 アフマダリエフの強い言葉は海外メディアでも話題沸騰となった。だが、いまや業界内で「世界最強」と絶賛される“モンスター”に対する評価は揺るぎない。それを裏付けるのは、ボクシングの酸いも甘いも知る元世界王者の言葉だ。 米メディア『Boxing Scene』のポッドキャスト番組『Pro Box TV』に出演した元世界2階級制覇王者のポール・マリナッジ(米国)は、パウンド・フォー・パウンドを考える企画内で「イノウエは常に可能な限りタフな試合を求めている。ドネアとの初戦の厳しさを見ただろ?」と指摘。2019年11月に実現した名手ノニト・ドネア(フィリピン)とのWBA・IBF世界バンタム級王座統一戦を回想し、井上が猛者から「逃げていない」とする意見を展開した。 「あの試合でイノウエは眼窩底を骨折した。でも12ラウンドを戦い抜く、タフさを見せた。それに誰もが評価していたスティーブン・フルトンとも戦ったよな。あの時も『難しい試合になるかもしれない』と言われていたけど、彼は『いいよ、やろう!』って感じで挑んで圧勝した」 自身のベストを発揮できる階級を模索しながら、最強への道を切り開いてきた井上。そのマッチメイクの凄みを語るマリナッジ氏は、「難しい相手に勝つことで、評価はまるで変わる。すべてがタフではないとしても、イノウエは可能な限り厳しい相手との試合を追い求めているんだよ」と断言。そして、“モンスター”の示す価値観に敬意を示した。 「イノウエは西洋の選手たちとは全く違う環境で育ってきた。だから価値観も違う。彼らはどんな試合も実現させるし、自分から挑戦するんだ。単に見せかけたり、幻想を抱かせたりするだけじゃなくて、自らの力で『最強』が何たるかを証明しようとするんだよ。 今の西洋にはこういう姿勢のアスリートはほとんどいない。今の選手の大半は、自分の口座が潤っていれば、それでぐっすり眠ってられるみたいだ。とにかくイノウエは常に最高の試合をやろうとしてる。その姿勢を疑う必要なんて全くない」 プロキャリアで常に「至高」を追い求め、スターダムをのし上がってきた井上。アフマダリエフをはじめとする対戦を望むライバルたちの挑発は今後も続くだろうが、そうした周囲の雑音に惑わされない彼の姿勢に対する評価は不動だ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]