井上尚弥が10・31米ラスべガスでモロニーと無観客防衛戦が決定…敵は最強挑戦者だけでなく新型コロナ禍の未知数要素
プロボクシングのWBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(27、大橋)が9日、横浜市内の大橋ジムからオンライン会見を開き、10月31日(日本時間11月1日)に米ラスベガスのMGMグランドで無観客試合としてWBA同級3位、IBF4位のジェーソン・モロニー(29、オーストラリア)と防衛戦を行うことが発表された。井上は、当初4月25日にラスベガスでWBO同級王者ジョンリール・カシメロ(31、フィリピン)との3団体統一戦を予定していたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で延期となりファイトマネーに不満を持ったカシメロが9月26日のプレミア・ボクシング・チャンピオンズ(PBC)で防衛戦を行う方針に変更したため井上の米国でのプロモートを任されているトップランク社が、WBO1位でもある現状の挑戦者候補で最強のモロニーを井上の米国本格デビューの対戦相手に選んだ。モロニーは双子の兄弟ボクサーで兄のアンドリューは前WBA世界スーパーフライ級王者。昨年11月7日に行われたWBSS決勝のノニト・ドネア(37、フィリピン)戦から約1年のブランクが空き、統一戦が流れたモチベーションの低下や、米国入国の際の自主隔離期間など未知数な部分が多いが、井上は、「第二章の一発目」と、この試合を位置づけており、「KO決着なら序盤から中盤」と約束した。
消滅したカシメロ戦との3団体統一戦への思いは?
新型コロナ禍にもファイティングポーズを失ったことはない。 「いよいよという気持ちもあるんですけど、一度、試合が4月に決まって、その後、延期になってから、ずっと試合モードでいる。いつでも試合ができるようにしていた」 4月25日に米ラスベガスでカシメロとの3団体統一戦が決まっていたが、新型コロナウイルス拡大の影響で試合が流れた。 「正直、延期になったときには色々と考えた」 ――何を色々と考えたのか? そう聞くと「目の怪我もあり激闘を制したばかりで100パーセントで挑めるのか、という不安はあった。カットした傷が開きやすい状況でもあったから。そういうものを抱えた中で戦うのはどうなのか、と。たまたま延期になって万全で挑めることになり、プラスになる期間だとポジティブに捉えた」という。 ドネアとの激闘では右目眼窩底骨折を負った。手術をせず保存治療を選んだが、カットした古傷も含め万全を期すためには必要な休養だとポジティブに発想を転換したのである。 いつまでたっても延期された試合のメドが立たなかったが、「仕方のないこと。来年に挑めばいいと、焦りはなかった」と腹をくくっていた。 ラスベガスでは6月に入って無観客のテレビマッチがスタートするようになったが、海外メディアの報道によると、カシメロはファイトマネーの交渉でプロモーターのトップランク社と折り合いがつかず、ライバルである「PBC」が9月26日に行う興行出場に方向転換した。3団体統一戦は延期どころか消滅してしまったのである。 逃げたと怒ったのか?それともビジネスと割り切ったのか? 「なんとも思わなかった。(3つ目の)ベルトがかかっていようがいまいが、戦うことに変わりはない」。意外にもそこまでカシメロへの執着心はなかった。ただ、「対戦相手が変わった以上、今はカシメロを考えていないが、お互いが勝ち上れば、将来の対戦は見えてくる」と、3団体統一戦をあきらめたわけではない。 大橋会長も「中止ではなく延期だと思っている」という。