井上尚弥が「やらせて下さい」と来春米国での3団体統一戦を直訴したカシメロは5年前の因縁の相手だった
WBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(26、大橋)が、衝撃のTKO勝利でWBO世界同級王者を統一したジョンリル・カシメロ(30、フィリピン)との3団体統一戦を来春米国・ラスベガスのリングで実現したい意向であることを2日、後楽園ホールで明らかにした。井上の訴えを受け入れた大橋秀行会長は、渡米先で契約を結んでいる世界的なプロモート会社のトップランク社に伝え、同社も前向きだという。注目の井上の次戦は来春、米国ラスベガスでのカシメロ戦で一気に進展しそうだ。
大橋会長はトップランク社に打診
モンスターの気持ちが動いた。 「(カシメロを)ターゲットにしていますよ。(大橋)会長にやらせて下さいと言った。バンタムでここまできたら、今さら(世界)ランカーとやってもしらける。だったら、やれるだけ(チャンピオンクラスの強い相手と)やりたい。会長も(実現に)いい手ごたえをつかんでいるんじゃないですか」 タヒチへのリフレッシュ旅行から帰国、真っ黒に日焼けして髭も生やし、逞しい風貌にイメチェンした井上は、次戦の対戦相手にカシメロを指名する考えをハッキリと明かした。 次戦の最有力候補だったWBO世界同級王者のゾラニ・テテ(南アフリカ)が30日(日本時間1日)、英国バーミンガムで、暫定王者のカシメロに3ラウンドに2度のダウンを奪われてTKO負けした。カシメロは、破壊的な右のアッパーからショートフックの連打でテテに足がよろけまともに立っていられないほどの大ダメージを与えた。 「テテは打たれ強くもないと思っていたので、ああいう予想はしていた。負けるなら、あの展開だろうなと」 井上はカシメロのKO勝利を予期していたという。 「テテより興味深い。カシメロは僕とはちょっと違う。フィリピン独独の野獣感がある」 サウスポーのアウトボクサーのテテよりも、超好戦的なカシメロの方が、井上が常日頃求めている「ヒリヒリ感」がある。やるか、やられるかのKO必至の勝負は、大歓迎なのだ。 WBSS決勝で激闘の末、5階級制覇のレジェンド、ノニト・ドネア(フィリピン)に勝ったリング上で、井上は、その前の試合で、弟の拓真に判定勝利していたWBC世界バンタム級王者、ノルディ・ウーバーリ(フランス)との試合を「弟の敵討ちをしたい」と訴えていた。だが、「ウーバーリは拓真がいけばいい。王者が入れ替わってもWBCは拓真が」と、弟・拓真のリベンジに期待したいと、心変わりした。実際、拓真も「自分がリベンジしたい」と、敗戦後に訴えていた。 トップランク社と異例の契約を結んだ平岡アンディ(23)の米国デビュー戦のセコンドにつくために渡米していた大橋会長は、偶然、テテ対カシメロ戦をネット中継で見終えた直後に、トップランク社のボブ・アラムCEOらとの会合を持ったという。 井上から「カシメロとやる選択肢はあるのでしょうか」と打診を受けていたこともあり、トップランク社に、その意向を伝えたところ、同社もカシメロ戦実現に前向きの姿勢を示したという。