井上尚弥の米ラスベガス上陸は異例尽くし…1億ファイトマネー、「完璧調整」、4団体統一戦構想
その意味でもマロニー戦は、未来へつなげる重要な査定試合となる。大橋会長は、試合がない期間の井上尚弥の進化を証言した。 「久々という感じがしない。スパーを見ていても完璧に近い出来。テクニック、フットワーク、サイドステップのスピードが著しく伸びている」 新型コロナの影響で海外からスパーリングパートナーを呼べない状況にあるが、大橋ジムの世界戦経験のある松本亮、大型ルーキーの松本圭佑、期待のホープ、桑原拓、元日本フライ、ライトフライ級王者の黒田雅之(川崎新田)らと週に3度のペースでスパーリングを消化してきた。 当初は、ぶんぶん振り回してくるファイタータイプのカシメロを想定、その後、オーソドックスなボクサーファイターのマロニーに標的が変わり、違ったスタイルのボクサーの対応策に取り組んできたことで「総合力が上がった」と大橋会長は見ている。 4月25日の統一戦が延期、9月に決まりかけたが、また流れて、長らく先の見えない状況に置かれていたが、井上尚弥は泣き言のひとつも言わなかったという。 「普通ならモチベーションが下がっても仕方がない状況だったが、泣き言のひとつもなかった。練習生や4回戦の選手が泣き言を言ってくるのに、尚弥は、まったくぶれない。改めて尚弥の強さが、こういうところにあるんだと再発見した。世界戦が終わっても、すぐに練習を再開することを不思議だと思っていたがボクシングが生活の一部になっている」 大橋会長は、その強靭なメンタルを「もうひとつのモンスターの部分」と表現した。 新型コロナが蔓延した4、5月にジムは閉鎖を余儀なくされていたが、誰一人いないジム内で、来年1月に再起戦の決まった弟の拓真との“真剣スパー“が度々、行われた。マスボクシング以外の兄弟スパーを父で専属トレーナーの真吾さんが禁止してから、もうずいぶん年月が経過するが、コロナ禍にあたって解禁。2人は互いに高め合った。 この間、肉体改造も進んだ。ジムと同じビル内にできた低酸素トレーニング施設で心肺機能がアップ。「走っていても息が切れなくなった」というほどスタミナも強化された。マロニー戦は、おそらく序盤に決着がつくだろうが、たとえ長期戦になってもパフォーマンスには何の心配もない。