インド株という挑戦とワクチンという福音 尾身会長「もうしばらく」
新型コロナウイルスの全国的なまん延に歯止めがかからず、政府は「緊急事態宣言」を6月20日まで再延長することを決めた。なかなか新規感染者が減らないのは、従来ウイルスより感染力が高いとされる変異ウイルスの影響が指摘される。政府はワクチン接種を加速化させ、7月末までに高齢者への2回接種を終える目標を掲げているが、政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長は「ワクチンは福音」だと強い期待を示し、国民に「もうしばらく」の感染防止対策への協力を訴えた。 【動画】「緊急事態宣言」6月20日まで再延長へ 菅首相が会見
当初予想以上に「感染予防」にも効果か
「高齢者の場合は重症化予防だが、感染予防も我々が思っていたより期待される」 尾身会長は緊急事態宣言の再延長が決まった28日夜の会見で、新型コロナワクチンをこう評価し、幅広く接種が進むことを望んだ。 一般論として、ワクチンの効果には(1)感染予防効果(2)発症予防効果(3)重症化予防効果(4)集団免疫効果――などが期待される。尾身会長が「当初予想よりも期待できる」と語ったのは(1)の感染予防への効果だ。昨夏の会見で西村康稔(やすとし)担当相は、打てば感染しにくくなる「感染予防」や多数が免疫を持つことで感染拡大を防御する「集団免疫」については実証が難しく「分からない」という見方を紹介していた。 尾身会長はこう続けた。「我々も去年、分科会で(ワクチン接種の)優先順位を議論した時の提言では、基本的には『発症予防』『重症化予防』がメインという前提で話してきたが、ここにきて外国のデータを見ると、『発症予防』に加えて『感染予防』についてもかなり効果があるのではないかという指摘がなされている」。 コロナ感染が爆発的に広がった欧米では、ワクチン接種を進めることで感染者を急激に減少させた国がある。イスラエルや米国、英国などがそれだ。 尾身会長は、こうした劇的な効果がそのまま日本に当てはまるかについては慎重な見方を示した。「実は欧米の国ではロックダウン(都市封鎖)が終わった後に打っていることもあるし、多くの国民が感染している中でやったということで、そのまま外国の例を日本に持っていくことはできないと思う」。 集団免疫がいつ頃達成されるかの見通しにも関心は集まる。「どのくらいというのはサイエンティフィック(科学的)に日本の場合は何%と言うことはできない」と明確な数字は言及しなかったが「半分くらいになると少しは効果が出てくる」とのイメージも語った。 「集団免疫のような状況」(尾身会長)になるべく早く近づけるためにも「高齢者の後に、とにかく早く65歳以下の人にも打つということ」が重要だと強調した。