澤穂希(元女子サッカー代表)の名言「苦しい時は、私の背中を見て」を振り返る──パリ2024オリンピック特集「レジェンドが名場面を振り返る」
パリ五輪に挑むなでしこをどう見る?
──先輩、専門家として、現在のなでしこをどのように見ていますか? なでしこジャパンとして結果が出ていないので、あまり注目されていないのだろうな、と感じています。WEリーグが充実して、プロ選手として環境が整うことは、子どもたちや将来の女子サッカー選手にとって希望になりますが、でもいいことばかりではないとも思うんです。私たちは恵まれない環境で育ってきたからこそ、勝ちたいという強い気持ちがありましたし、最後の一歩も頑張れた。勝利の意味も価値もわかっていたので、ハングリー精神がアドバンテージになったように思います。今は、質の良い芝があって、代表選手は全員ビジネスクラスで移動して、専属シェフが帯同します。ワールドカップの出場ボーナスも高額ですし、スポンサーの支援も充実しているはずです。本当にいい環境なんですけれど、だからこそ、もっともっと試合で出せるはずっていう思いが強いですし、歯がゆさも感じています。 ──なでしこはいよいよパリオリンピックを迎えます。展望をお聞かせください。 2023年ワールドカップでスペインが優勝していますが、日本は4対0でスペインに勝っています。そのスペイン戦が初戦の相手。いきなりクライマックスですね(笑)。オリンピックでもどの大会でも初戦って難しいんですよ。緊張もするし、初めての選手もいて、普段のプレイができなくなる。チームって一個一個そういう苦しい試合を乗り越えて強くなっていきますから、それを1試合目で出せるかどうかは、本当にわからない。初戦の結果次第で、2試合目、3試合目の流れが変わってくるんです。初戦に負ければプレッシャーもかかりますし、勝ちか引き分けであれば、次の試合の気持ちの持ちようが全然違います。とにかく、日本は初戦のスペイン戦がカギですね。 ──ブラジルも強いチームですが、アフリカは勢いに乗らせると手がつけられない印象があります。 そうなんです。国内の試合感覚であれば「抜けた」と思える場面でも足が伸びてきたり、足一本で裏を取られてカウンターを決められたり、読めないんです、アフリカ勢って。 ──他の強豪国はいかがでしょうか? 前回大会のワールドカップ優勝チームのスペインはもちろん注目しています。力を発揮できるメンバーが揃っているので、サッカー大国のアメリカも注目しています。なかなか結果は出ていないですけれど、追いこまれた時のアメリカは強いですよ。もしアメリカと日本が決勝で対戦することになったら……私はアメリカでのプレイ経験があるので期待しています。でも、決勝まで行くってそんな簡単じゃないんですけどね。 ──個人的に注目しているプレイヤーはいかがでしょうか? 谷川萌々子(FCローゼンゴート/スウェーデン)、19歳のボランチです。代表歴が浅い中で、今回の18人に選ばれるのは相当な実力の証です。1回だけじゃなく、2回、3回と何度も追える強さがあります。判断力も高く、セカンドボールを拾えます。左右の正確なロングシュートも魅力です。
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