クリント・イーストウッドはなぜトランプを支持したか? 高倉健の映画と共通する「孤独と哀愁」
2024年11月に行われるアメリカ大統領選挙。共和党の候補者指名を目指していたクリスティー氏が撤退を表明するなど、前大統領のトランプ氏が支持率で共和党の他の候補者を大きくリードしているようです。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、「なぜトランプに人気が集まるのか」を解明する上で、俳優で映画監督のクリント・イーストウッド氏に注目したようです。若山氏が独自の視点で語ります。
トランプを押し上げた「ある種の精神」
ウクライナとパレスティナ、二つの戦争が続く中で幕を開けた2024年。日本もいきなり大震災にみまわれた。多難な年になりそうだ。 今年は、パリでオリンピックとパラリンピックというスポーツの祭典が、アメリカで大統領選挙という政治の“祭典”が催される。そしてあのドナルド・トランプが、いまだに強い人気を誇り、大統領に返り咲く可能性が高いといわれる。もはや何が起きても驚かないという心境だが、なぜトランプに人気が集まるのか、という疑問に答えるのはなかなか難しい。 そこで思い起こすのは、8年前の大統領選挙で、トランプが民主党のヒラリー・クリントンと争ったときに、映画人のクリント・イーストウッドがトランプ候補を支持したということである。僕自身が、トランプには好感をもっていないがイーストウッドには好感をもっているので、このことが心に引っかかっていた。 映画『マディソン郡の橋』で共演したメリル・ストリープ (アカデミー賞を3回受賞し20回以上ノミネートされて名女優の誉が高い)がそのことを聞いて「イーストウッドはいい人だから私が説得する」といって試みたのだがうまくいかなかったようだ。 しかし前回(4年前)の大統領選では、イーストウッドはトランプを支持しなかった。アメリカの大統領にふさわしい人物とは思えなかったのだろう。今回も支持しないものと思われるが、とはいえ8年前にトランプを大統領に押し上げたアメリカ人の「ある種の精神」にイーストウッドが同調したことはたしかであり、その精神は今も変わっていないように思われる。 ここでその精神を仮に「クリント精神」と呼んで、そこに光を当てることによって、アメリカにおけるトランプ支持の強さの秘密を解明できないだろうか。日本の評論家がいかにトランプを批判しても、その精神がアメリカ文化のひとつの側面であることはたしかなのだ。