「女性として生きたい」トランスジェンダー「見た目」問題の葛藤 #性のギモン
一方で、二審の高裁判決では、トイレの制限は適法と判断された。他の職員がもつ性的羞恥心や性的不安も考慮して、全職員にとっての適切な職場環境を構築する責任があるとされたのが理由だった。立石さんによれば、「原告も女性用トイレの使用を開始してからすでにかなりの年月が経過していますが、苦情を述べた女性職員は一人もいません」という。 「裁判所は、人権の砦として『ルッキズム的な視点』に自覚的であるべきです」 昨今ではLGBTQなど性的マイノリティーのトイレを含む悩みへの理解も広がっている。ただ、一部にはまだ違和感を覚えている人たちもいる。 そんな中で、当事者側も女性側を気遣う意見を持っている。黒部さんは柔らかにこう話した。 「私たちMTF当事者は、ただ純粋に女性として生きたいだけなんです。それを多くの人に理解してもらえたらありがたい。もちろん私たちは、当事者の権利だからと、何をやってもいいとは思っていません。やっぱり社会に対して、こちらから歩み寄る行動も必要だと思う。そんな考えを、逆にMTF当事者の人たちにも伝えていきたいなと思っています」
------ 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。
------ 古川雅子(ふるかわ・まさこ) ジャーナリスト。栃木県出身。上智大学文学部卒業。「いのち」に向き合う人々をテーマとし、病や障がいの当事者、医療・介護の従事者、イノベーターたちの姿を追う。「AERA」の人物ルポ「現代の肖像」に執筆多数。著書に『「気づき」のがん患者学』(NHK出版新書)など。