「それは違うよ」と父に言いたい――性教育を受けた生徒たちが大人に感じるギャップ #性のギモン
昨今、「性教育」に注目が集まっている。2021年には「性教育本」が過去最多となる31冊も発行された。しかし、カリキュラムを組む学校はまだ多くない。取り組む学校では、どんな授業を行っているのか。授業を受けた生徒たちは「(男子と女子が)お互いのからだについて、もっと早くから知るべき」「大人がもっと人権と性について学んでほしい」と話す。授業を取材し、生徒と先生に話を聞いた。(取材・文:岡本耀/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
雑誌の「恋愛相談」に生徒が回答してみると
私立の正則高校は、東京タワーのすぐ近くにある。生徒数は約900人、うち3分の1が女子だ。2000年に男子校から共学になり、そのタイミングで性についての授業を始めた。総合授業「人間の性と生」は、1年生のみ週1時間、年間で24~27時間行われている。現在は、国語科の谷村久美子先生(45)と社会科の佐藤卓先生(31)が担当だ。 6月に行われた「人間の性と生」の授業で、佐藤先生は以下の「悩み」を生徒に提示した。 Q:今、つきあっている彼女がいます。キスまではしているけれど、それ以上はまだ……。で、今日こそはと思って、彼女が俺のアパートに来た時、ベッドに押し倒したんです。そしたら「やめて!」と本気になって怒っちゃって、逃げたのです。ショックでした。彼女は俺のこと本気で好きじゃないんでしょうか。 先生は、生徒たちに「名回答者」になったつもりで、この悩み相談に答えるように言った。次の授業で生徒の回答から十数本を選び、プリントにして配った。これはそのうちの3つだ。 A 彼女には彼女なりのペースがあると思うので、互いに話し合ってみるのが一番だと思います。自分は大丈夫だから相手も大丈夫だろうと勝手に考えず、相手の気持ちになってみたり、すぐに行動に移さないでしっかり考えることが大事だと思います。恋愛はあせると絶対に失敗すると思います。 B アホですか? そういうのは合意があると分かって初めてできるものです。なしにやったのならそれはもう犯罪です。それに、好きじゃないなら一緒にいないと思いますし、別れを告げられると思います。人それぞれ歩幅は違いますので、相手のペースを考えながら共に歩んでいくといいでしょう。 C 惜しいことをした。君はじつに惜しいことをした。だいたい女に「やめてくれ」と言われてやめるバカがどこにいる。部屋まで来たなら彼女は十分やる気があったのだ。それを途中でやめてしまうとは……まったく惜しいことをした。女というのは体裁の動物である。襲われたら一応「やめて」と言う。男は女にそう言わせてあげなくてはいけないのだ。そのうえで、もう少し押しつけていれば、かならずできたはずだ。そのあとどうなったか。きっと彼女は「私はそんなつもりじゃなかったのに、あなたが無理やり……」と言ったろう。それでいいのだ。そう言わせてあげるのだ。