激戦地アッツ島とキスカ島を物語る日米の沈没船、発見の裏側 今も帰れぬ祖先の地に先住民が同行
キスカ島周辺で見つかったもの
同様の調査は2018年にキスカ島でも実施され、その結果は2024年11月26日付けで学術誌「International Journal of Nautical Archaeology」に論文が発表された。 調査では、日本海軍の伊号第七潜水艦(1943年6月に米国海軍の駆逐艦から砲撃を受けて大破し、意図的に岩礁に乗り上げた)や甲標的(敵の軍艦を魚雷攻撃するための乗員2名の小型潜水艦)の残骸のほか、キスカ島の日本軍の拠点を攻撃しているときに対空砲火を浴びた米国陸軍航空隊のB-24リベレーター爆撃機の破片なども記録された。 調査チームを率いた米カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋学研究所の海洋考古学者で、論文の筆頭著者であるアンドリュー・ピエトラスカ氏が注目しているのは、伊号第七潜水艦の残骸だ。 氏はこの残骸について、「日本軍がキスカ島を占領していた間も制空権は米軍が握っていたため、数千人の占領軍のために水上艦で補給を行うことは困難で、潜水艦に頼っていたのだと思います」と語る。
新しい探査ツールが活躍
どちらの島の探査でも、海底のマッピングと調査に水中ロボットが使われた。 キスカ島の調査チームは2週間にわたって船上から島の周辺を調査した。また、ソナー機器を搭載した4機の自律型無人潜水機(AUV)も使って主な場所を調べた。研究者たちは、複数の機体を24時間サイクルで連続稼働させることもできるAUVは、従来の曳航式ソナーよりもはるかに広い範囲の海底について詳細な地図を作成できると説明する。 アッツ島の調査では、研究船につながれた特殊な軽量の遠隔操作型無人探査機(ROV)が、深海からのライブ映像を提供した。ブッシュ氏は、状況によっては、回収後にデータをダウンロードする必要があるAUVよりも、リアルタイムでデータを確認できるROVの方が望ましいと語る。氏は、これからの海洋考古学調査では、両方の技術を使うのが理想的だと話す。