バイデン勝利でも大統領選は長期化する? 考えられ得る展開は? 上智大・前嶋教授に聞く
接戦を繰り広げていたアメリカの大統領選挙は民主党のジョー・バイデン氏の勝利が伝えられています。しかし共和党のトランプ大統領は郵便投票に不正があったとして法廷闘争をちらつかせ、州によっては僅差のため再集計に入る可能性があり、結果の確定までには長期化も予想されます。今後考えられ得る展開について、アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に聞きました。 【図解】対日政策は? 経歴は?「トランプ×バイデン」比較
トランプ氏「最高裁で争うかもしれない」
11月3日(米東部時間)に行われた大統領選の一般投票。郵便投票などの期日前投票の開票が進むにつれ、バイデン氏の優位な状況が明らかになり、アメリカのメディア各社はバイデン氏の勝利を伝えています。バイデン氏は7日夜(同)に演説し「分断ではなく、団結のための大統領になる」と勝利宣言しました。
一方、トランプ氏は5日夕(同)にホワイトハウスで記者会見を開き、郵便投票などで不正が行われていると主張。「合法的な票を数えれば私は簡単に勝つ。違法な票を数えれば、彼ら(民主党)は選挙を盗むことができる」「われわれは多くの訴訟を起こすことになる。数多くの証拠を持っている。連邦最高裁判所で争うことになるかもしれない」などと一方的に述べ、法廷闘争を進める構えを示しています。 ここで思い起こされるのが10月末に保守派のエイミー・バレット氏が承認された連邦最高裁判所判事の人事です。 リベラル派判事として27年間務めたルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が死去したことを受けた後任人事ですが、これによって、現在9人いる連邦最高裁判事のうち、実に保守派とされる判事が6人となり、多数派が盤石なものとなりました。大統領選後に承認するべきだとの批判を押しのけ、トランプ大統領は選挙前の承認にこぎつけました。 今後トランプ氏が敗北を受け入れず、各州の票の集計をめぐって「いくつかの州の結果は無効である」などと訴えて法廷闘争を仕掛け、決着が連邦最高裁まで持ち越された場合、今回の人事がトランプ氏に有利に働き、大統領選を大逆転に導く可能性はあるのでしょうか。 前嶋教授はそれには慎重な見方を示します。「アメリカという国で選ばれた判事の質を考えると、トランプを守ろうというわけではなく、憲法解釈の範囲内で合理的に考えられるかで判断するだろう」。 ただ保守派の判事には傾向があるといいます。「州権主義」、つまり各州の独立性を尊重する姿勢です。そのため「トランプ氏が有利になるような判断を州の裁判所が出し、連邦最高裁まで訴えが上がってきた場合には『州の判断だから』と認める可能性はある」としました。