乳がんか卵巣がんの人が血縁者にいたら「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」について知っておくべき!【更年期女性の医療知識アップデート講座】
HBOCと診断されたらどうする?
HBOCと診断された人は、がんの手術の方法や薬剤などの選択肢が、そうでない人と異なる。これは、HBOCを診断する大きなメリットだ。また、すでに乳がんを発症していてHBOCと診断された人が、まだ発症していない卵巣と、発症していないもう片方の乳房への対策には、「リスク低減手術」と「サーベイランス(きめ細かく計画的に行う検査)」がある。 リスク低減手術は、がんを発症する前に予防的に乳房を切除、あるいは卵管・卵巣を摘出することだ。これによって亡くなるリスクを下げることができる。女優のアンジェリーナ・ジョリーはこの手術を受け、乳房、卵巣を切除し、大きな話題となった。 HBOCと診断され、すでにがんを発症している方に対するリスク低減手術は、2020年から保険適用になった。費用は手術の種類や術式によって異なるが、乳房切除の場合は15万~18万円(1~3割負担の場合)、卵管・卵巣摘出の場合は18万~24万円(1~3割負担の場合)が目安。いずれも高額療養費制度の対象だ。
HBOCとわかっても、がんになる前は保険が使えない!
前回<乳がん、卵巣がんの血縁者がいる場合、どうする?二人の「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」の女性の選択>にてご紹介したお二人のように、HBOCとわかっても乳がんも卵巣がんも発症していない人に対しては、サーベイランスもリスク低減手術も保険適用にはなっていない。すべて自費になる。そのため、お二人ともすぐにリスク低減手術をせずに、サーベイランスを継続して受けていた。 自費の費用は施設によってかなり差があるが、サーベイランスの造影乳房MRIは、約3万~5万円。加えてマンモグラフィや超音波も自費の検査料金がかかる。 HBOCのサーベイランスとは、どのようなものなのだろうか? 乳がん画像診断の第一人者の戸﨑光宏先生(相良病院放射線科主任部長、昭和大学医学部放射線医学講座客員教授)に聞いた。
「サーベイランスとは、がんを早期発見するためにきめ細かく行う検査です。乳がんでは、造影乳房MRI検査が優れた検出力を持ちます。それにマンモグラフィを組み合わせた検査を定期的に行います。 アメリカをはじめ世界で多く使われているガイドラインでは『1年に1回の造影乳房MRIとマンモグラフィ』。欧州のガイドラインでは『半年ごとの造影乳房MRIと1年に1回のマンモフラフィ』を推奨する場合もあります。とにかく、リスクの高い乳がんを見つけるには、造影乳房MRIがファーストです。 HBOCでがん未発症の人の経済的負担は、とても大きくなります。そこで私たち専門家グループは、臨床試験などを行い、国に対して保険適用を認めてもらえるよう活動しています。保険適用になるまではと思い、私が理事長を務めるNPO法人乳がん画像診断ネットワークでは、HBOCでがん未発症の人に対して、保険適用と同等の費用で造影乳房MRIが受けられるように差額分を補助する事業をしています*」(戸﨑先生) * NPO法人乳がん画像診断ネットワーク「ハイリスク女性に対する造影乳房MRI検診サポート事業」<https://bcin.jp/topics/49.html>