恋愛感情も性的関係もない…セクシュアルマイノリティの私達が「友情結婚」したワケ #令和の親 #令和の子
多様性が当たり前になるなか、従来通りの枠組みで結婚をする性的マイノリティの人達がいます。本来であれば現行制度における結婚は難しいにも関わらず、なぜ結婚という結論に至ったのか。お互いが性的マイノリティだという一組の夫婦から、結婚を選択せざるを得ない現実について考えていきます。
友情結婚をした夫婦、それぞれのセクシュアリティ
お互い性的マイノリティであり、恋愛感情を持たずに友情結婚、さらには子どもも誕生したという30代夫婦のミナトさん・サツキさん(ともに仮名)。 ミナトさんは恋愛的指向は女性に向き、性的指向は男性に向いているといいます。 「初恋は女性でしたし、女性とお付き合いしたこともあります。ただ性的な関係になったことはありません。一方で性的な欲求は男性に向いていました」 一方でサツキさんは、アロマアセク*1の傾向があるバイセクシャル*2だといいます。 *1:恋愛感情を抱かないアロマンティックと性的欲求を抱かないアセクシュアルの2つのセクシュアリティをもち合わせるセクシュアリティ *2:男性と女性、両方の性に対して恋愛感情を抱いたり性的にも惹かれたりするセクシュアリティ 「初恋は保育園のときでクラスでも人気の男の子でしたが、成長とともに男性への興味はなくなりました。大学生のときには同性の恋人ができたこともありましたが、社会人になってからは自分にアロマアセクの傾向もあると気づきました」
性的マイノリティの二人…なぜ友情結婚だったのか?
二人のセクシュアリティから、結婚に至る可能性がほぼゼロに近いことは明らか。それなのに、なぜ結婚へと舵を切ったのでしょうか。 「1人でいることを好む性格なので、結婚にはまったく興味がありませんでした。ただ母は顔を合わせるたびに『誰か良い人はいないの?』と圧がすごかったですね。さらに30歳になった頃には、父が『そろそろ孫の顔が見たい』と言い出して。何とかしないとマズい雰囲気になりました」とミナトさん。一方、サツキさんの場合も鍵となるのは親。 「母は昔から『早く結婚しろ』とうるさくて、とにかく黙らせたかったんです。またヒステリック気質の母から離れたくて実家を出たのに、親に介護が必要になった場合、ひとり身だと家に戻って来いと絶対にいわれてしまう……そんな不安も結婚へと向かわせました」 二人とも親にはカミングアウトしておらず、当然のように子に結婚を望みました。当時はドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』が人気だった頃。“契約結婚”というキーワードから友情結婚というスタイルを知り、結婚へと行動を起こします。 出会いのきっかけはインターネットの「掲示板」。友情結婚掲示板のミナトさんの書き込みをサツキさんが発見。やりとりが始まると、半月ほどで会うことに。お互いのセクシュアリティを明かしているからか、「なぜ結婚したいのか」「子どもを希望するか」など、結婚に対する価値観のすり合わせは初対面でもスムーズだったといいます。 半年後には、結婚に向けて話を進めていくことに合意。親への報告、両家の顔合わせ、そして親を納得させるためのフォトウェディング……出会いからおよそ2年弱で婚姻届を提出し、二人は夫婦となりました。