「韓国のトランプ」に思わぬ機会、尹氏自滅で次期大統領最有力候補に
(ブルームバーグ): 韓国国会が尹錫悦大統領の弾劾訴追案を可決したことで、大統領の最大のライバルである李在明氏に国政トップに就くチャンスがついに巡ってきた。
14日の採決では一部の与党議員が賛成に回ったことで訴追案は可決。尹大統領は職務停止となった。最大野党・共に民主党の代表を務める李氏は、次期大統領の最有力候補に浮上した。
ベテラン労働運動家の李氏は汚職疑惑、ハンガーストライキ、工場でのけが、暴漢に首を切りつけられる事件など、数々の困難を乗り越えてきた。その理想主義からバーニー・サンダース米上院議員と比べられたり、大衆主義的スタイルから「韓国のトランプ」と呼ばれたりしている。
尹大統領の弾劾は、李氏にとって劇的な転換点となった。李氏は先月、公職選挙法違反の罪で懲役1年、執行猶予2年を言い渡され、大統領になる夢はほぼついえたかのように見えた。刑が確定すると、李氏は国会議員を失職し、10年間は被選挙権を失う。
「尹氏の自滅行為により、李氏が息を吹き返した」と、延世大学行政学科のチェ・ヨンジュン教授は指摘。「李氏は尹大統領の後任として最有力候補であることは間違いなく、それに向け出馬の準備をするだろう」と述べた。
李氏は判決を不服として控訴したことにより、大統領選の早期実施に備える上で十分な時間を稼げるかもしれない。
尹大統領弾劾訴追を受け、今後は憲法裁判所がその妥当性を審査し180日以内に決定を下す。弾劾が妥当と判断されれば、大統領は罷免され、60日以内に大統領選挙が行われる。憲法裁の審査プロセスは数週間から数カ月かかる可能性がある。
尹氏は3日夜、1987年の民主化後では初めての非常戒厳を宣布したが、国会本会議で非常戒厳の解除を求める決議案が可決されたことから、わずか6時間で解除した。
長年の軍事独裁に対する激しい抗議運動を経て、世界で最も強固な民主主義国家を築き上げたことに誇りを持つ多くの韓国国民は、突然の非常戒厳宣布に強く反発した。