「韓国のトランプ」に思わぬ機会、尹氏自滅で次期大統領最有力候補に
李氏が再び大統領選に出馬する場合、こうした国民感情に乗ることになるだろう。2022年の大統領選は韓国史上最も接戦となり、李氏は僅差で尹氏に敗れた。今回は、与党の支持基盤である保守層の有権者も取り込むため、より穏健な指導者として自身をアピールする可能性があると、チェ教授は指摘する。
選挙が今実施された場合、李氏の大勝を世論調査は示唆している。12月10日に行われたエムブレイン・パブリックの調査では、「次期大統領に誰が最も適していると思うか」との質問に対し、37%が李氏と答えたのに対し、与党「国民の力」の韓東勲代表はわずか7%だった。韓代表は16日、辞意を表明した。
労働者階級の家庭で育った李氏は、10代の頃に働いていた工場で機械に挟まれる事故に遭い、左腕がゆがんだままになった。05年に政界入りし10年に城南市長に当選。学校制服や給食の無償化などの政策が功を奏し、再選を果たしたが、大衆迎合主義として批判も浴びた。
16年のインタビューでは自らを有権者の意思を実行する謙虚な公僕と表現。その年、当時の朴槿恵大統領の退陣を求める運動を主導し、朴氏の後任を決める17年の大統領選では、共に民主党の候補者指名を巡って文在寅氏と争って敗れた。
対日強硬姿勢を軟化か
対照的な生い立ちにもかかわらず、李氏はトランプ次期米大統領と比較されることが多い。両者とも政治エリートを嫌い、暗殺未遂事件を乗り切った。
李氏は支持者とのコミュニケーションや政敵の批判にソーシャルメディアを頻繁に活用している。尹大統領が非常戒厳を宣布した12月3日の夜には、自身が国会に入るために塀を飛び越える様子をライブ配信した。
李氏は、16年と20年の米大統領選で民主党候補指名を争って敗れた進歩派のサンダース上院議員に自身をなぞらえている。李氏は所得格差を批判し、韓国をアジアで初めてベーシックインカム制度を導入する国にするよう推進している。