今年で317年、宝永からマグマを溜め続けた富士山…次の大規模噴火は「これまでにないステージの始まり」となるか
富士山は、「いつ噴火してもおかしくない」火山。いつ、どこで噴火するのか。それを予知することができれば、被害を大きく軽減することができます。しかし、残念ながら、日時の特定までは非常に困難でありながら、発生前にどのような噴火になるのかを予測する術や精度が向上しています。 【画像】噴火予知…どういうことなら、わかる? どうしてわかる? さて、そうした予測に欠かせないのが、過去の火山活動の履歴です。 12月16日は、現在のところ最新の大規模噴火である「宝永噴火」の起こった日です。なんと、その時の火山灰は、偏西風にのって関東一円に飛散し、江戸でも5センチメートルも積もったとされており、その様子は、新井白石による『折たく柴の記』にも記録されています。 先の記事でもお伝えしたとおり、富士山体には、この300年分のマグマが蓄積されていると予測されます。これまでの富士山の噴火活動を検証していきます。 *本記事は、ブルーバックス『富士山噴火と南海トラフ 海が揺さぶる陸のマグマ』から、内容を再構成・再編集の上、お送りします。
「噴火のデパート」富士山
富士山は「噴火のデパート」と呼ばれるほど、火山灰、溶岩流、火砕流、泥流など多様な噴出物を出しつづけて、およそ10万年ものあいだ、噴火を繰り返してきた。 しかし現在は1707年の宝永噴火以来、300年ものあいだ沈黙を保っている。そのため富士山が噴火するなど思いもよらないという日本人は多いのだが、いうまでもなく、このまま噴火をしないままでいるということはありえないのである。 では、次に富士山はいったい、いつ、どのように噴火するのであろうか。 近年の調査で、富士山は下から先小御岳火山、小御岳火山、古富士火山、新富士火山という「4階建て」の構造をもつことが明らかとなった。4つの富士山の火山活動のうち、いま私たちが「富士山」として見ることのできる新富士火山の活動は1万1000年ほど前から始まったのだが、古富士火山とはかなり活動の様子が変わっている。 一言で述べれば、さまざまな噴火様式が開始されたのである。降下テフラだけでなく、溶岩も大量に流し、さらに噴石や軽石も飛ばした。 また、マグマを噴出した場所が一定ではない。これは山頂の火口だけでなく、山麓にある側火口も頻繁に使われるようになったということである。さらには、古富士火山の時代にも複数回あった、山の側面を崩す山体崩壊までも起こしている。 新富士火山の活動から「噴火のデパート」と呼ばれる状況が始まり、それは現在まで続いている。この時期の活動をくわしく知ることは、将来噴火の予測をするうえでもたいへん重要である。