今年で317年、宝永からマグマを溜め続けた富士山…次の大規模噴火は「これまでにないステージの始まり」となるか
新富士火山の5つのステージ
新富士火山の1万1000年以後の火山活動は、大きく五つのステージに分けられている。各ステージごとにくわしく見てみよう。 「ステージ1」は、1万1000年前から8000年前までである。この時期には、古富士火山の時代に優勢であったスコリアや火山灰の噴出が下火になった。その代わりに大量の溶岩が噴出しはじめる。 「ステージ2」は、8000年前から4500年前までである。この時期にはやや小規模な爆発的な噴火を数多く起こし、火山灰を大量に噴出した。これらは降下テフラとなり、地元で「富士黒土層」と呼ばれる真っ黒でフカフカした豊かな土壌をつくった。 「ステージ3」は、4500年前から3200年前までである。この時期は、山頂から溶岩を頻繁に流し出したことで特徴づけられる。噴出したマグマは3立方キロメートルにも達し、この時期に現在のような円錐形の巨大な成層火山の姿ができあがったと考えられている。 「ステージ4」は、3200年前から2200年前までである。この時期には山頂で爆発的な噴火がしばしば起き、火砕流も発生した。また、このステージでは、富士山の東方の山麓にスコリアを大量に降り積もらせている。有名なものとしては、山頂から大沢スコリアが、北斜面の側火山から大室スコリアが、また東斜面の側火山から砂沢スコリアがそれぞれ噴出し、山麓に厚く堆積した。 「ステージ5」は、2200年前から現在までである。今後の富士山の噴火を予測するうえで、このステージは最も重要な時期でもあるので、詳しくみていこう。
「ステージ5」その噴火の特徴
ステージ5では、山麓斜面でやや小規模で爆発的な噴火をたくさん起こしたことで特徴づけられる。過去2200年間で富士山は少なくとも42回噴火したことがわかってきた。 数多くの火口が、富士山の北西と南東を結ぶ線上と、それに直交する北東の斜面の二つの線上にできている。たくさんの火砕丘がこの火口線上の付近で噴出したのである(第2章の図2─7参照)。これらの火口は最初にスコリアを放出し、しばらくのちに小規模の溶岩を流し出した。 現在残っている古文書から、ステージ5に属する個々の噴火の時期を特定できるものもある。こうした噴火の履歴を年表で示した(図「古文書から見た富士山の噴火・噴気などの記録と噴火の時期」)。