なぜ朝倉海はRIZINバンタム級TMでボンサイ柔術”第4の男”をKOで仕留めることができず苦戦したのか…右拳に起きた異変とは?
6月の「RIZIN.28」で兄の未来が、アランのボンサイ柔術の師匠格の1人にあたるクレベル・コイケに失神1本負けを喫した。 朝倉海のセコンドには、その未来がいて、アランのセコンドにはクレベルと、RIZINライト級王者のホベルト・サトシ・ソウザの姿があった。 「兄へのリベンジという気持ちはなかった。戦っている相手が違う。クレベルと戦うわけではなかったから。ただボンサイ柔術は勢いがあってRIZINでチャンピオンにもなって勝ち続けている。RIZINの中心は朝倉兄弟でありたい、僕らが引っ張っていきたい、という気持ちは強くチームとして負けたくない気持ちを強く持って戦った」 朝倉兄弟vsボンサイ柔術のプライドをかけたもうひとつの戦いがあったのである。だから骨が折れてもの覚悟で朝倉は殴りにいった。 しかし、プランの変更ですべてのリズムが狂い始める。 ローキックと左のボディブローで突破口を開こうとするが、2ラウンド2分過ぎに組みつかれ、バックをとられコーナーに押し込まれるように初めてテイクダウンを奪われた。 3ラウンドには、あまりに朝倉が攻めてこないため「距離を近づけたかった」というアランが両手を後ろに組んでノーガードで挑発する始末。そして2分過ぎには、下半身をクラッチされて、頭からマットにぶん投げられ、場内に海ファンの悲鳴が響いた。 組まれて防戦一方。打撃に対するディフェンスも甘くなり、アランの反撃を受けて左右のストレートも何発か被弾した。 「拳は硬かったが、効いたパンチはなかった」と朝倉は振り返ったが、もし、アランにパンチ力が備わっていたら、試合がどう転んでいたかはわからなかった。 終了間際に、朝倉が飛び膝蹴りからアランをコーナーに突き落としたところでゴング。朝倉は無表情のまま首をひねり、「判定で勝った」と確信していたアランは両手を突き上げていた。 判定ではジャッジ3人全員が朝倉を支持した。 アランは、2度テイクダウンを取り、組みでも朝倉をコントロールしたが、朝倉が、1ラウンドに右ストレートで膝をつかせたダメージの度合い、ローキックも含めた手数の多さと、攻勢ポイントを評価したのだろう。 レフェリーに右手を上げられても朝倉は笑わなかった。右ストレートという武器を失っていたのだから、判定決着も仕方がなかったのかもしれないが、朝倉は、「メインなのに判定で微妙な試合をして申し訳ないです」とファンに謝罪。 インタビュールームでも同じ言葉を繰り返した。 「メインを任せてもらって、しっかりとKOか1本で倒す予定が、微妙な判定となって、ふがいない結果です」 一方のアランは、「さみしいね。心が苦しいね」と日本語で言い、うつむいた。 「朝倉はパンチがうまい。右手。ほんとに強い」 朝倉は、試合後、アランのコーナーに歩み寄り、クレベル、サトシとも会話をしていたが、「いい試合だった」「強いね」と「いい言葉をくれた記憶がある」という。 互いにリスペクトの気持ちを抱き、朝倉兄弟vsボンサイ柔術の第2ラウンドは幕を下ろした。