アフリカを蝕む「資源の呪い」 現在の輸出傾向から探る経済成長への鍵
「資源の呪い」を越えられるか―新しい輸出への動き
仮に2012年から16年までの輸出額の減少幅が、各国の輸出、そして経済の不安定度を示しているとすると、原油依存、鉱産物依存が高いほど不安定であり、輸出が多様化しており、農産物でも生花や野菜などの新しい農産物、そして工業製品の輸出の比率が高いほど不安定でなくなると言えるだろう。 このように、アフリカの輸出のあり方は、全体としては植民地と同様に、単一産品輸出依存に近い状況にあるが、よりきめ細かく見ていくと現在の主要輸出品への依存は、特に目立つ原油でさえ、植民地からの独立以降に生じたものであり、その後も、規模はそれほど大きくないものの、工業製品や園芸作物の輸出の拡大などの新しい動きがあることが分かる。アフリカの輸出は独立以後の歴史の中で、さまざまな変動を重ねてきたのである。ただ、その中にはナイジェリアの原油への集中のように、他の輸出品の拡大と多様化を妨げてきた例もあり、近年の経済成長がその傾向をいっそう強めたのではないかと懸念される例もある。多様化や工業化がこうした「資源の呪い」を越えていく勢いを持たない限り、アフリカの持続的発展は難しいであろう。 次回以降は、国内向けの財やサービスの生産にも視野を広げて、より具体的にアフリカの産業、そして経済の新しい動きを見ていくことにしよう。 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 兼 神戸大学大学院国際協力研究科 教授 高橋基樹)専門は、アフリカ地域研究、開発経済学。主な著書に『開発と国家―アフリカ政治経済論序説―』(勁草書房)、『現代アフリカ経済論』(共編著、ミネルヴァ書房)など