アフリカを蝕む「資源の呪い」 現在の輸出傾向から探る経済成長への鍵
資源輸出増加を手放しには、喜んではいられない現実―輸出収入の不安定性
図2は、アフリカ最大の輸出品である原油の価格の国際市場における推移を示している。前回紹介したように、21世紀になってからアフリカ経済は、ほぼ毎年、高い人口増加を上回る成長を遂げるようになったが、原油価格も21世紀に入ってから急激に上昇し、リーマン・ショックの影響によって下落した2009年を挟んで2010年代の前半まで高水準にあったことが分かる。ほぼ同じことが他の鉱産物の価格についても言える。こうした原油をはじめとする鉱産物価格の上昇、そして鉱産物輸出の収入拡大がアフリカの高度成長を牽引したと考えてよいであろう。 しかし、2015年に原油価格はリーマン・ショックでの下落幅を超えて激しく低下し、さらに16年にもその下落が止まっておらず、2012年ごろに比べて半減していることも図2から見て取れる。 このような鉱産物市況の動向は、新興諸国、とくに中国の経済状況に影響されて生じたものである。言うまでもなく、中国経済は21世紀になってから超高度成長を記録し、それを支えるために、「爆食」とも言われるかたちでアフリカを含む世界中からの資源=鉱産物の輸入を拡大し、資源ブームを引き起こした。この資源ブームが、アフリカの輸出を拡大させ、高度の成長をもたらしたと言っても言い過ぎではない。そして、中国の成長は2010年代半ばに減速し、原油をはじめとする資源価格を急落させた(原油価格の下落には、シェールオイルなどの開発も影響しているが、ここでは省略する)。 いずれにせよ、資源の輸出に偏って依存することは、アフリカ経済が外部の需要に左右されやすい不安定なものであることを意味している。鉱産物価格の下落は、アフリカからの輸出に極めて深刻な影響を与えた。再び図1を見ると、2012年から16年にかけて、輸出額全体がほぼ半減しているのが分かる。こうした鉱産物の価格の動向は、アフリカ経済全体にも影響を与え、国際通貨基金(IMF)によれば、それまで5%前後で推移していた成長率は、2015年には3.2%に低下し、さらに16年には1.3%にまで下落したと推計されている。16年の成長率は人口増加率を大きく下回った。このことに着目すれば、アフリカ経済の現状は植民地と同じような体質にあり、その将来を安易に楽観してはならないということになろう。 なお、このわずか4年間の変化でアフリカの輸出の品目構成にも変化があった。原油等鉱産物燃料の比率は、35.0%に大きく低下した。しかし、その他の鉱産物を合わせると依然として約6割を占め、アフリカの輸出における鉱産物の重要な位置付けは変わっていない。