アフリカを蝕む「資源の呪い」 現在の輸出傾向から探る経済成長への鍵
植民地経済との連続性と非連続性
このように限られた種類の輸出品、すなわち原油をはじめとする鉱産物に依存しているという意味で、現代のアフリカ経済の体質は植民地経済と同様であると言ってよい。しかし、より詳細に個別の国の状況を見ていくと、アフリカ諸国は、植民地時代が残した輸出のあり方を全くそのまま引き継いだわけではなく、さまざまな変化を経験してきたこと、また国によってその状況が異なることがわかる。 表1はアフリカの特徴的な9カ国について、その主な輸出品目がどれだけの比率を占めているか表したものである。各国について上位品目の輸出額及びその構成比を、最大のものから順に、それらの合計が50%以上となるまで示している。この品目の数が多いほどそれぞれの国の輸出品目が多様であり、少ないほど限られた品目に集中していることになる。また同じ表の右端の欄には、2012年から16年にかけて輸出収入が何パーセント減ったかを示した。この表ではその減少幅の大きさの順に上から9カ国を並べている。 表1のいちばん上に掲げたナイジェリアは、2012年には一国だけでアフリカの輸出合計の3割強を占めていた輸出大国であるが、その輸出収入の9割以上は鉱物性燃料等(ナイジェリアの場合は原油と天然ガス)によっている。ナイジェリアの原油・天然ガス輸出の大きさが、アフリカ全体の鉱産物依存を決定づける重要な要素であると言ってよい。また、3のアンゴラはナイジェリア以上に鉱物性燃料等の比率が高い(そのため、両国については表1にはこの品目のみが表れている)。両国は、ほぼ輸出が原油等への単一産品依存の状況にあると言ってよい。原油・天然ガス輸出への依存度の高い産油国はほかにも、赤道ギニア、コンゴ、ガボンなどアフリカにいくつか存在する。 一つ重要な点は、これらの国の原油・天然ガス依存は、植民地からの独立以降に生じたということである。ナイジェリアの場合、植民地支配から独立した1960年の直前に原油の商業向け生産が始まった。それまではヤシ油などの限られた農産物の輸出に経済が依存していたが、1960年代以降、世界中に石油文明が広がるにつれ、原油等への依存が高まり、1970年代半ばの石油ショックを機に輸出は原油等に集中するようになり、ヤシ油の輸出は急激に縮小した。ナイジェリアの輸出、そして経済は独立後の原油輸出の拡大に伴って多様化したのではなく、農産物主体から鉱産物主体へと輸出構成を変えながら、単一輸出産品依存の状況が再生産されたのである。このことは、資源輸出の拡大がほかの産品の生産や輸出に負の影響を与える「資源の呪い」の作用を示唆している。