近年なぜ注目されるのか? TBSラジオの深夜を担う宮嵜守史が考える音声メディアの魅力
2021年、インターネット広告費がマスメディア(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)の合計の広告費を超えた。なかでもラジオの広告費は最下位であり、年々落ち込み続けている。 ところがここ数年、音声コンテンツが盛り上がりを見せている。雑誌ではたびたび「ラジオ特集」が組まれ、スマートフォンアプリで気軽に音声配信ができるサービスが成長し、個人によるポッドキャスト配信なども増加している。 伊集院光や爆笑問題、バナナマンなどの名だたる芸人が曜日ごとに番組を担うTBSラジオの深夜放送枠『JUNK(ジャンク)』の統括プロデューサーを務めるのが宮嵜守史(みやざきもりふみ)だ。ラジオ番組の作り手として業界に20年以上携わってきた、宮嵜が考える音声メディアの変化とこれからとは。(取材・文:鈴木梢/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース 特集編集部)
「自分の居場所はここしかない」と飛び込んだラジオ業界
「そろそろ潮時かな」。憧れたエンタメ業界を志し、テレビ制作会社を受けるも採用に至らず、フリーターとしてうだつの上がらない日々を過ごしていた宮嵜は、実家の温泉まんじゅう屋を継ぐことを現実的に考え始めていた。 下宿生活をしていた高校時代に深夜ラジオに出会い、特に『岸谷五朗の東京RADIO CLUB』と『宮川賢の誰なんだお前は』(いずれもTBSラジオ)に夢中になった。また、地元の群馬を訪れたとんねるずや浅草キッドによる番組ロケの様子を目の当たりにして、「人が楽しんでくれるものを作ってみたい」と漠然とエンタメ制作の世界に憧れを抱き始めた。 しかし、就職活動でテレビ制作会社を受けるも失敗。そのままフリーターになった宮嵜に転機が訪れたのは、大学時代にアルバイトをしていた『こども音楽コンクール』(TBSラジオ)のディレクターからの1本の電話だった。「他の番組もADとして手伝ってほしい」。そのひと言をきっかけに、1990年代後半に「自分にはここしかない」とラジオの世界へ飛び込んだ。