近年なぜ注目されるのか? TBSラジオの深夜を担う宮嵜守史が考える音声メディアの魅力
極楽とんぼ、雨上がり決死隊の2番組同時終了で学んだこと
宮嵜は26歳でディレクターになり、2002年に開始した深夜放送枠『JUNK』の『極楽とんぼの吠え魂』(番組は2000年から放送開始、2007年以降は『加藤浩次の吠え魂』)と『雨上がり決死隊べしゃりブリンッ!!』(2004年に水曜JUNKへ昇格)を担当。 TBSラジオ『JUNK』は、2002年4月1日に放送を開始した。現在、月曜日は『伊集院光 深夜の馬鹿力』、火曜日は『爆笑問題カーボーイ』、水曜日は『山里亮太の不毛な議論』、木曜日は『おぎやはぎのメガネびいき』、金曜日は『バナナマンのバナナムーンGOLD』と、日本を代表するお笑い芸人・タレントが担当している。 JUNKのディレクターといえばTBSラジオの花形ポジションであり、「自分はJUNK2曜日を担当している」という矜持で、宮嵜の自意識は膨れ上がっていった。 しかし2010年、この2番組が同時に終了することになる。 当時のことを「腐ってしまったというよりは、底なしの暗闇に、なんの命綱もない状態で解き放たれてしまった感覚だった」と振り返る。初めて「ラジオ業界を辞めよう」とも思った。 「当時の自分はとにかく自意識過剰で。自己顕示欲や承認欲求も強いから、聴いてもらうものに自意識を介在させてしまっていました。番組の評価を自分の手柄だと思いたい気持ちがあっても、自分が手柄を立てること自体を目的にしてはいけない。当然ですが、何よりもまず番組やパーソナリティーが評価されるべきですから」 宮嵜は原点に立ち戻り、それから『おぎやはぎのメガネびいき』や『ハライチのターン!』といった番組を立ち上げから担当し、育てていった。そうして、若手芸人の面白さをラジオを通して多くの人に伝える仕事にたどり着いた。
広告費が最下位でも、なぜラジオは注目されるのか
電通が発表した「2004年 日本の広告費」によると、その年、インターネットのウェブサイトに掲載される広告費がラジオ広告費を初めて上回った。 今ではインターネット広告費がマスメディア(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ)の総広告費を追い抜いている。ラジオの広告費は2021年時点で1106億円で、マスメディアの中で最下位だ。 それでも近年、「ラジオ番組」や「音声コンテンツ」は雑誌などで特集を組まれることが多く、若い世代を中心に注目を集めている。特にコロナ禍、緊急事態宣言下でラジオの聴取数は緩やかながらも増加 し、宮嵜も「ながら聴きだけでなく、しっかり内容を聴いてくれる人が増えたように感じる」と話す。 しかし、盛り上がりに比べて聴取率の数字はほとんど変化がないという。いったいなぜなのだろうか。宮嵜は「ラジオの存在感が大きくなったように見えるのは、道具が変わったからだと思う」と話す。 2010年、ラジオ放送をインターネットで同時にサイマル配信(ライブストリーミング)するサービス「radiko(ラジコ)」が誕生。同時期にスマートフォンが国内で普及し始め、ラジオをPCやスマートフォンでも聴く人が増加した。NRIマーケティングレポート によると、2022年時点で、ラジオ聴取の20%がradiko経由によるものとなっている。