近年なぜ注目されるのか? TBSラジオの深夜を担う宮嵜守史が考える音声メディアの魅力
パーソナリティーの人(ニン)の重要性
南海キャンディーズの山里亮太は、俳優・蒼井優との結婚発表会見の5時間後に、『山里亮太の不毛な議論』で本音を語った。その放送は、同番組史上トップの聴取率を記録した。ラジオを自身の重要な居場所として捉えているパーソナリティーと、そのリスナーとで築いてきた関係性によって、そこでしか語られないエピソードは多い。 「音声アプリなどの配信は、トークライブに近いと思います。まず話している人そのものが好きだから、お金を出すし、足を運ぶ。だから、ラジオパーソナリティーになった人に僕が言うのは、新宿駅前で自分たちのことを何も知らない人に足を止めて聴いてもらえるように話してほしいということです。興味を持たない人が面白いと思って足を止めてくれたら、徐々にその人数が増え、地層のようにリスナーからの信頼が厚くなり、番組が評価されていくので」 タイムフリー聴取が普及しているとはいえ、何げなく聴いた放送回で、番組自体やパーソナリティーに初めて触れる人も多い。だからこそ、その回や一部分だけを聴いても、興味を持ってもらわなければならない。そして信頼を積み重ねて、パーソナリティーとリスナーの関係性が築かれていく。だからこそパーソナリティーは大切な発表こそラジオを選び、リスナーもそれを期待している。 では、パーソナリティーとリスナーの関係性を築くために重要なものは何か。宮嵜は人(ニン)の重要性を考える。人柄や声質など先天的なものも必要だが、後天的な要素も重要となる。 「ラジオはよく“本音のメディア”と言われますが、僕は本音というよりは“素のメディア”だと思っています。自分を作って『これ本音なんですけど』と言ってもそれは違う。むしろ素でしゃべっていれば、おのずと本音はリスナーに伝わるはずです。パーソナリティーが素になったとき、隙が表れます。常に虚勢を張ってしまう人や、ガチガチに自己プロデュースをしている人は、素も隙もなかなか見えないので、リスナーから信用されにくいと思います」 実際、TBSラジオの深夜放送では、その数時間だけパーソナリティーたちが素をあらわにすることが多い。 「たとえば『空気階段の踊り場』はドキュメンタリーラジオと言われますが、本当に彼らの月曜の深夜を、彼らの人生のその部分をそのままトリミングした1時間だと思うんですよ。僕は『バナナマンのバナナムーンGOLD』にもそれを感じています。あれだけ日々忙しい中で、金曜の深夜2時間だけ素に戻っている。2時間だけ切り取られた、日村さんと設楽さんの人生を覗きにきている感覚を味わえる番組だと思います」