少子化でも「教員は増やす必要がある」具体的根拠 「乗ずる数」の改善が多忙化の歯止めになる
少子化のスピードはスローになる…
――少子化による公立学校の児童生徒と必要な教員定数についての将来推計をされていますね。しかし少子化が指摘されるようになってずいぶん長いと思いますが、この間に将来推計はすでにされているのではないですか。 広田 どうやら、しっかりした将来推計はなされてきていません。研究者によるこれまでの教員需給の将来予測は、過去のトレンドから今後を推計する単純なものでした。行政の側では長期の推計はやっていないようです。 少子化を口実に教員定数の改善が進まないとしたら、教育の質はよくならないし、今の教員の長時間勤務の問題解消もおぼつきません。だからこそ、具体的な数値を手にして教員増員の議論ができるようにするためには、将来推計の作業が必要でした。 橋本 ここでは、公立小学校の児童数の推移について説明したいと思います。文科省の「学校基本調査」(2023年度)によると、2023年5月1日現在の公立小学校の児童数は593万3907人です。これは既定値なので、これを基準値とすれば、過去と同じように少子化が進行するとすれば、将来の児童数は推計できます。しかし、それでは正確な推計とはいえません。 そこで私たちは、厚労省の「人口動態統計(確定数)」のうち2023年までの出生数(概数)と、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2023年推計)」における「出生中位(死亡中位)推計」による2024年から2057年の出生数(推計値)を推計の要素として、今後の学齢児童数の推移を計算しました。 それを今後の公立小学校の教員数がどうなっていくのかについての試算するベースにしました。 広田 今は急速な少子化が進んでいますが、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によれば、もう少し先には、少子化のスピードはスローになります。 橋本 これで計算すると、2023年度に593万3907人だった公立小学校の児童数は、2033年度には448万9462人に減ります。さらに2043年度には443万1331人になると推計されます。 ――児童数の推計ができれば、それにともなう教員数も正しく推計が可能だというわけですね。 橋本 教員の定数の決め方は複雑で、子どもの数が1割減ったから教員定数もそのまま1割減るわけではありません。定数の決め方のたくさんのルールをひとつずつ算出して積み上げていく手法で、今後の少子化にともなう公立小学校の教員数の将来推計を行ってみました(『季刊教育法』第222号など)。 今回はとりあえず少子化の中位推計で試算の結果を出しましたが、もっと少子化が進む低位推計の場合についても同じような作業をやっています。近いうちには、公立中学校の教員数についても推計をやりたいと考えています。