僕を捨てた父が認知症にーー孤独なゲーム芸人の壮絶人生と父への愛憎 もう一度家族になる #老いる社会 #ydocs
ゲーム芸人・フジタの人生は、絶望と希望の繰り返しである。小学校入学直前に、母が急死したあと、父は別の女性をつくって、家を出て行ってしまう。「自分は捨てられた…」。一人ぼっちの幼いフジタは絶望し、憎しみを原動力に人生を生きてきた。 【画像】絶縁した父とどうするのか…ゲームに囲まれて暮らすフジタに迫る選択 しかし、年老いた父(81)が認知症を患い、内縁の妻に見放されると、フジタは自分を捨てた父を放っておけず、家族という幻想に導かれ、父の面倒を見始める。だが絶縁した父との接し方がフジタにはわからない。 一方、別れても内縁の妻を追い求める父に、フジタの憎しみの炎は再び燃え上がる。 認知症を患った憎むべき父に翻弄されながら、ひたむきに介護と向き合うフジタを待ち受けているのは、絶望か、それとも希望か。
母が死んで、小2で父に捨てられた…
2021年3月、芸人の小出真保さんから、ゲーム芸人・フジタ(=藤田真也さん・45)を紹介された。 フジタは独身の中年で、ファミコンを中心にゲームに造詣が深く、ソフトとハードを収集する、いわゆる“ゲームオタク”である。現在4万本のソフトを所有し、神業プレイで客を楽しませる「ゲーム芸人」として多方面で活躍している。 取材は、フジタが絶縁した父を訪ねる場面から始まった。 「カッとなると、すぐに手が出るので」とフジタがスタッフに注意を促す。父からの絶対的な支配を受けてきた証だった。 フジタの母は小学校入学直前、くも膜下出血で亡くなり、フジタの面倒を見るはずの父は、小学2年の時、「別の女性」をつくって家を出ていってしまう。相手は、フジタの同級生の母親で、シングルマザーだった。 フジタは週3万円の生活費を渡され、実家で一人暮らしをするようになる。帰宅しても誰もいない毎日。父は時々4人で食事しようと誘ってくれたが、そこにも地獄が待っていた。 父は内縁の妻の気を引くため、フジタより同級生をかわいがったのだ。2人を叱る時、父はフジタだけに暴力をふるう。それを黙って見ている内縁の妻を、フジタは許せなかった。 「どうしてお母さんは死んだのか」 「どうしてお父さんは僕を捨てたのか」 「こんな生活がずっと続くのか」 親から与えられるはずの愛情の欠如。その空白をフジタはファミコンで埋めるしかなかった。 高校を中退し、お笑い芸人として自立を決めたフジタは、父と縁を切った。