【ABC特集】家も金も、身寄りもいない…刑務所から出てきた81歳元覚せい剤密売人 「僕らが諦めたら終わり」再犯防ぐため立ち上がった元暴力団員の支援活動に密着
その時、もう1人の高齢男性が刑務所から出てきました。81歳の島正次郎さん(仮名)。島さんも偶然、この日満期出所したのです。しかし―。 (島さん)「あれ!?誰も迎えに来てない!」 すぐに分かりましたが、島さんには誰も引受人がおらず、帰る家もありませんでした。山下さんは、「島さんも車に乗せてもらえないか」と川中さんに直談判しました。 (山下さん)「この方が車に乗せていってくれるって!『ありがとう』って言って」 (島さん)「すんません!お願いします!」 その後、「連絡先を書いた手帳をなくした」「通帳と実印もない」と大騒ぎをする島さん。荒唐無稽な話を続けることから、記憶力が著しく衰えている可能性が出てきました。
■横行する出所者狙いの“貧困ビジネス”
(山下さん)「この人は川中さんって言うねんけど、川中さんはこうやって刑務所から出てきた人を支援する人やねん。きょうからでも寝るところ困らんようにって用意したりする活動をしてはるねん。自分も川中さんにお願いするか?」 (島さん)「とにかく医者に行かなあかんねん!」 (山下さん)「医者に行くにはよ、生活保護の段取りせなあかんやんけ。家が無かったら生活保護の申請がでけへんわけよ。お願いするか?どうする?」 (島さん)「ほんなら、お願いします」 (山下さん)「・・・と言うてますが」 (川中さん)「了解、了解。大丈夫やで」 島さんと山下さんの2人の出所者を車に乗せて、川中さんは大阪市内で自身が運営するグループホームへと向かいます。
山下さんによると、いま、行き場を失った出所者を狙い撃ちにした”貧困ビジネス”が横行しているそうです。一足早く出所した元受刑者らが”貧困ビジネス”の舞台となる福祉アパートなどをつくり、満期出所が近い受刑者へ手紙を送って、出所後は自分施設に来るよう仕向けるというのです。そして、わらにもすがる思いでやってきた人の生活保護費をかすめとったり、犯罪グループの「駒」として使ったりするというのです。 (山下さん)「(島さんのところにも)手紙がばーって入ってきてるんですよ。行く当てがなかったら電話しますやん。そこからもうドツボですわ。(貧困ビジネス業者は)ほんまにずるい、腹黒い。人としてどうなんって思いますけどね」 (川中さん)「行き場がなかったら頼ってしまうからね、どうしても」 そんな2人の話を聞いて、島さんはほっと胸をなで下ろしました。 (島さん)「あ~助かった。もうどないなるか思って。そればっかり不安やったわ」 (山下さん)「俺が声かけへんかったらもう・・・」 (島さん)「むちゃくちゃになってるわ。助かった~」
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