行き場のない出所者支援の現場に密着しました

　今年9月、刑務所を満期出所してきた81歳の男性。出迎える人は誰もおらず、家もなく、親族との連絡はつきません。偶然その場に居合わせたのは、出所者の更生支援に力を注ぐ、元暴力団組員。出所者に住まいを提供することで再犯を防ごうと奔走する人々の、数日間に密着しました。 【動画で見る】再犯率は約5割　家も金も、身寄りもいない…行き場なき出所者たち　支援活動の最前線に密着 「刑務所にまた戻りたいか？そこは自分が努力しないと抜け出せないからさ」 （利用者）「はい、頑張ります」

■出所者を支援するのは元暴力団員

川中正喜さん（49）

　大阪市城東区で障害者グループホームを運営する川中正喜さん（49）。 　川中さんのグループホームで生活支援を受けている障害者は10人。そのうち半数は刑務所や少年院といった矯正施設を出てここにやってきました。 　川中さん自身も15歳の時から不良の道へ。やがて暴力団組員となって犯罪を繰り返し、30代半ばまでのほとんどを塀の中で過ごしてきました。 （川中さん）「何度も何度も刑務所に入っていく中で、どうやったら社会の中で生きていけるかを考えたとき、再犯防止活動をすれば自分が刑務所に戻らなくなるんじゃないかと思って」

全国の刑務所から届いた手紙の束

　そんな川中さんのもとには全国各地の受刑者から手紙が届きます。 　中でも、3年前から定期的に届く、窃盗罪などで受刑中の40代男性からの手紙。便せんにびっしりと字が埋められ、こんな言葉が繰り返されていました。 （40代男性の手紙）「川中さんの人助けの心を自分も学びたいです」 　男性の言葉を、川中さんは真剣に受け止めるようになっていました。

■出所者の苦労

手紙をくれた男性を迎えに京都の刑務所へ

　9月中旬の早朝。川中さんの車は京都・山科に向けてひた走っていました。 　長年手紙をくれていた40代の男性がこの日、満期で京都刑務所を出所することになり、川中さんが刑務所で迎えるのです。 　刑務所で待つこと30分、男性が出てきました。長年の手紙の主、山下悟さん（仮名・40代）です。川中さんは肩をポンとたたいて、「お疲れさん」と声をかけ、外へと歩き始めます。 　しかし、山下さんは川中さんの腕をつかみ、なぜか引き留めようとします。