増殖する外来生物と在来生物の「交雑種」 放置し続けてもいい問題なのか?
今までその国に存在しなかった生物が何らかの手段で侵入し、在来種を駆逐してしまうケースを紹介してきました。さらに外来種が在来種と交尾をして、新たなる「交雑種」を作り出してしまうという生態リスクが報告されています。 水産物や農作物の収穫や人間に直接、危害を与えるもの以外は、重要視されないこともありますが、研究者の間で懸念されている問題について、国立環境研究所・侵入生物研究チームの五箇公一さんが解説します。
外来種と在来種から生まれた交雑種が増殖中
外来生物がもたらす生態リスクのひとつに「種間交雑」があります。外来生物と在来生物が交尾をして、雑種をつくるという現象です。例えば、1940年代に食用として中国から導入されたハクレンやソウギョといった大型魚に混じって、タイリクバラタナゴという小型の魚も持ち込まれましたが、日本各地の湖沼に定着して、日本在来のニッポンバラタナゴという近縁種との交雑が進み、日本の純粋なニッポンバラタナゴが、雑種に置き換わってしまい、ほとんどいなくなってしまったという事例があります。
また私たちの身近に生えるタンポポのほとんどは日本産タンポポとヨーロッパ原産のセイヨウタンポポとの交雑によって生じた雑種タンポポとされます。このケースでは、外来タンポポが日本産タンポポの遺伝的特性を取り込むことによって、生まれた雑種はいっそう日本の環境に適応した「スーパー雑種」となり、外来タンポポ集団すらも駆逐しながら分布を拡大していると報告されています。 1970年代に食用として大陸から持ち込まれたチュウゴクオオサンショウウオが京都の鴨川水系で増殖し、元々住んでいたオオサンショウウオとのあいだで交雑が進み、オオサンショウウオの純系が絶滅寸前になっていることも有名な事例です。京都市では2011年から捕獲個体のDNA分析を進めていますが、2013年以降、同水系では、外来オオサンショウウオか雑種の個体しか確認されておらず、関係者は危機感を募らせています。