子どもが他者を助けられるようになる育て方とは 「自己実現の欲求」のさらに上を目指すために
アメリカは子どもだけで外出できるような環境ではないため、どこに行くにしても親と同行しなければいけない。図書館では本を貸してくれるのはもちろん、子どもを対象に多様な文化プログラムも行われていた。娘たちはすべてのプログラムに参加したがったため、私も毎日、出席カードにハンコを押すように図書館に通った。 ■全力で子どもをバックアップする 末っ子のヘソンは、中学生になってカリグラフィーという趣味ができた。まるで美術作品のように多様な書体を書くカリグラフィーこそ、ヘソンのおとなしい性格にぴったりだと思った。
しかし、1つ重大な問題があった。近所でカリグラフィーを教えてくれる人が見つからないという点だ。やっと探し出しても、大人を対象にした教室だった。 子どもを受け入れてくれる教室を探してあちこちに聞いて歩いたところ、高速道路を使って車で1時間ほどかかる場所に先生を見つけた。2時間の授業と合わせて合計4時間、数カ月にわたり教室に通い、基本を習得したヘソンは、さらにインターネットで勉強した結果、自分独自のスタイルを身につけた。
このように私は、勉強に直接関係のない趣味についても、全力で子どもをバックアップした。カリグラフィーの教室に通う車のなかでわくわくしているヘソンの顔が、今も目に浮かぶ。2時間の授業のあいだ、じっと待っていた母親のことを、ヘソンは心強い後ろ盾だてとして頼りにしてくれたことだろう。 親の役割というのは実に難しく大変なものだ。ときには無条件で子どもを愛さなければいけないが、ときには誰よりも客観的に判断しなければいけないからだ。
しかし、どんなに舵取りが難しくても、無条件の愛と客観的判断の2つはコインの裏表のように、常に併せ持っていなくてはならない。
シム・ファルギョン :主婦