獺祭と、モナコ公国の宮廷料理のペアリングはいかに?
旭酒造に残る15年前に撮った1枚の写真。それは当時の社長であった桜井会長がモナコ公国のアルベール2世大公を表敬訪問し、獺祭を手渡したときのものだ。その時、アルベール2世大公と宮廷料理人のクリスチャン・ガルシア氏はこう言ったという。「獺祭だ。この酒は知っている。そして好きなお酒だ」と。そして15年後、その友好関係が岩国の地で花開くことになった。獺祭本社蔵の眼下に広がる川辺のテラスで、モナコと日本の文化交流を目的にした、獺祭のペアリングディナー会が開催。獺祭ラバーが見届けたのは、岩国に一日限りのモナコの海辺が出現した美しい一夜だ。 【写真8点】ペアリングディナー会の様子、料理etc.
獺祭とモナコ公国との友好関係
世界に羽ばたくSAKE、獺祭だが、そのきっかけのひとつとなったのは、世界で最も多くミシュランの星を持つ伝説のシェフ、故ジョエル・ロブション氏とのつながりだ。 日本で獺祭と出合ったジョエル・ロブション氏はその美味しさに感動し、和食よりフランス料理のほうが獺祭に合うのではないか、という想いから2018年、獺祭とパリ8区に「Dassaï Joël Robuchon」を開く。フランスにおける日本文化への興味の高まりもあり、この試みはパリの食通達に歓迎をもって受け入れられた。 パリからの影響が強いモナコでも獺祭はその存在感を強めていく。モナコ内の名だたるレストランでは獺祭がワインリストにオンリスト。桜井会長が表敬訪問をした際には、すでにその名は知られる存在であった。 当時からモナコの宮廷料理人を務め、今回のディナーを担当したシェフのクリスチャン・ガルシア氏は、獺祭の味わいはもちろん、桜井会長との出会いが獺祭を特別なものにしたと語る。 「獺祭は私にとって特別な日本酒でしたが、今回、この岩国の風景や蔵をみて、獺祭の美味しさの理由を確認できました。桜井さんや獺祭を愛するみなさんに料理を提供できたことは、自分にとっても夢が叶った思いです」
モナコ宮廷料理人とのペアリングディナー
ガルシアシェフのもうひとつの顔は、宮廷料理人の団体「クラブ・ド・シェフ・ド・シェフ」の代表としての側面だ。この団体は、世界各国の国家元首・皇室/王室の専属シェフらによるもので、世界のトップの舞台裏の需要人物であるシェフに、新たな機会を創造し、各国の食を通じた文化交流の機会を促進するものだ。その一端として、世界の災害や貧困への支援も行い、日本では、東日本大震災や熊本地震の際、料理提供もサポートも行った。 「クラブ・ド・シェフ・ド・シェフ」創設者のジル・ブラガー氏は語る。 「宮廷料理人は大使をはじめ、関係者の健康を守るという大切な使命があります。災害支援もその延長として行っているものです。そして、もうひとつの使命は、その国の伝統料理を守っていくということ。フュージョン料理の流行はありますが、伝統料理は誰かが守っていかなければならないものだと思っています」 今回のペアリングに関しても、日本を意識したというペアリングではない。あくまでも、ガルシアシェフの考えるモナコ最高の料理を獺祭と合わせるという意欲的なペアリングだ。料理は実際に公邸で提供されるメニューを再現したものだという。